万博や合併だけじゃない 2025年の鉄道は何が起こる? 今までの“当たり前”が変わる「昭和100年」
2025年の鉄道は、大阪メトロ中央線の夢洲延伸やJR西日本の「エキスポライナー」といった万博輸送が控えていますが、他にも春には大小さまざまな「当たり前」が変化。また、事件、事故、災害の節目の年でもあります。
準大手2社が消滅 JR東は大プロジェクトが一区切り
運転業務省力化の切り札であるワンマン運転の導入が加速します。JR東日本はローカル線に加え、近年は大都市近郊の4~5両編成をワンマン化してきましたが、同ダイヤ改正でついに、10両編成の常磐線各駅停車、6両編成の南武線をワンマン化します。
同社は2026年春に横浜線、根岸線、2030年までに山手線、京浜東北線、中央・総武線各駅停車、埼京・川越線をワンマン化する計画で、今回の2路線は試金石となりそうです。
私鉄でも京王電鉄がワンマン運転導入に向けた自動運転の実証実験を2025年春から開始すると発表しており、関西では京阪電鉄が2025年秋に京阪本線・中之島線一部区間のワンマン化を検討中です。このほか、東武鉄道は2025年度末に北千住~北越谷間(緩行線)をワンマン化する予定で、今年はさまざまな準備が進むことになりそうです。
また、4月1日に、京成電鉄と新京成電鉄、南海電鉄と泉北高速鉄道が合併し、2つの準大手私鉄が消滅します。新京成電鉄改め京成松戸線は合併後も独立した運賃体系が維持されますが、南海泉北線は南海の運賃体系に組み込まれるため、南海・泉北を相互間利用する際の初乗り運賃が一度で済むようになり、値下げになります。
今年も運賃値上げラッシュが続きます。1月19日に神戸高速鉄道・阪神電気鉄道、神戸電鉄、山陽電気鉄道、2月1日に広島電鉄、4月1日にJR九州、JR北海道、道南いさりび鉄道が運賃改定を実施。京阪電鉄は10月の運賃改定を申請中です。
この他、JR東日本の社運を賭けた大プロジェクト「高輪ゲートウェイシティ」が3月27日にまちびらきします。今回開業するのは高輪ゲートウェイ駅直結のツインタワー「THE LINKPILLAR 1」のみで、残りの街区は2026年春開業予定です。
北陸新幹線や宇都宮ライトレールなど新線開業が目白押しだった2023~2024年に対して2025年は大きなニュースはありませんが、その中で注目したいのが広島電鉄の広島駅の新駅ビル乗り入れです。
当初は3月の新駅ビル開業にあわせてビル2階に発着する計画でしたが、資材の調達が遅れており、商業施設の完成後に工事、試運転を行うため、乗り入れ開始は夏頃に延期される見通しです。
最後に、2025年はさまざまな事件、事故、災害の節目の年でもあります。1月17日は阪神・淡路大震災、3月20日は地下鉄サリン事件から30年。3月2日は土佐くろしお鉄道宿毛駅衝突事故、3月20日は竹ノ塚踏切事故、4月25日はJR福知山線脱線事故、12月25日はJR羽越本線脱線事故からそれぞれ20年です。
鉄道の安全性は、これらの教訓、反省を踏まえて成り立っています。今を生きる私たちは、それを未来に引き継いでいく責任があるのです。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
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