戦車って国宝になるの!? 10万両ある中で「最高待遇」を得た車体 じつは歴史の生き証人でした

ベトナムでは、外国製の戦車を国宝に指定しているとか。一体どういうことなのか、展示されている博物館に行ってみると、歴史的な経緯と、指定された理由を知ることができました。

南ベトナム政府崩壊で先鋒を務めた記念すべき車体

 ベトナムの国宝になった戦車はT-54Bで、個体を識別するために843号車と呼ばれています。国宝指定を受けたのは2012年ですが、そこに至った理由はこの戦車がベトナム戦争終結の象徴的な事件となった1975年4月30日のサイゴン陥落に参加しており、その際に南ベトナム政府(当時)の大統領官邸に突入した戦闘車両だからです。

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T-54B戦車843号車を見学する人々。来歴だけでなく、戦車というビジュアルは人々を惹きつけるようだ(布留川 司撮影)。

 4月30日の早朝、北ベトナム軍はサイゴン(現ホーチミン)市に進軍し、南ベトナム(当時)の最後の元首であったズオン・バン・ミン大統領は北ベトナム軍に対する戦闘終結と無条件降伏を宣言。その後、この843号車と59式戦車(T-54Aを中国でライセンス生産したもの)の390号車が最初に南ベトナムの大統領官邸に突入しました。

 最初に大統領官邸に到着したのは843号車でしたが、通過しようとした正門脇の副門が小さいため引っかかり立ち往生。後から来た390号車は広い正門から突入して、官邸への一番乗りを達成しています。

 1975年当時、ベトナム戦争はアメリカ軍の全面撤退によって北ベトナム側が優勢となり、南ベトナムの敗戦は明らかな状態でした。アメリカ軍は、サイゴン陥落に備えて同年4月29日から在留アメリカ市民と一部の南ベトナム市民を脱出させる「フリークエント・ウィンド作戦」を行っており、南ベトナム政府の崩壊も秒読みの段階といえました。

 そんな渦中で2両の戦車が大統領官邸に突入したこと自体は、大局的に見ればそれほど大きなことではありません。しかし、歴史の観点から見ると、1950年代から続いた北ベトナムと南ベトナムの対立による長い戦争の終結を象徴するものであり、戦車というものはそのシンボルになり得るものだったのでしょう。

【画像】これが南ベトナム大統領官邸に突っ込んだ瞬間のT-54戦車です

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