「AT限定はダサい」から30年 国はMT免許を廃止したい? 4月の改正前に教習現場は困惑か

2025年4月1日より運転免許(普通車・普通二種)の教習課程が改変されます。ただ、制度改変に対応できない教習所もあるようで現場は混乱しているとか。ますます取得のハードルが上がるMT免許の取得について解説します。

まもなく「MT免許」が取りにくくなるかも

 このようなAT普及の背景には、バブル期まではクルマが一種のステータスシンボルであり、ドライバー(とくに男性)にとってはMT車を自在に運転できることがアピールポイントになっていたからだと言えるでしょう。

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2018年2月に発売された現行の「トヨタ教習車」。以前の教習車は「コンフォート」をベースとしていたが、「カローラ アクシオ」ベースに変わっている(画像:トヨタ)。

 そのような時代が終わり、クルマのコモディティ化が進んで「経済的で、便利で、運転がラクなものが良いクルマ」との価値観が人々の間に広く浸透したこと、さらに戦後、道路インフラが充分に整備されないままモータリゼーションの波が到来したことで、都市近郊の道路は慢性的に渋滞し、一般道ではストップ&ゴーの繰り返しが多い、わが国特有の交通環境が理由として挙げられます。

 これらの理由により、ここ30年でドライバーのMT離れは加速し、日本は世界でも類を見ないAT大国になったのです。

 そして、道路交通法の改正に伴い、このたびドライバーのMT離れを決定的なものにする運転免許(普通車・普通二種)の教習課程の改変が行われようとしています。

 これまでは全課程をMT車で教習していたのに対して、4月1日以降は第1段階の場内教習と第2段階の路上教習はすべてAT車で行い、AT車の見きわめに合格してから合計4回のMT教習に移るというカリキュラムに原則として変更されます。すなわち、AT限定免許を取得してから限定解除を行うのと教習内容は同じというわけです。

 しかし、AT車に比べてMT車は操作の習熟に時間がかかるものです。失敗をしながら徐々に操作に慣れていく現在のカリキュラムと違い、たったの4回でMTの操作をマスターしなければならない改定後の教習課程には、どうしても無理を感じてしまいます。

 一方、国は今回の教習課程の改変にあたって「技能教習はすべてAT車で行う」との通達を出しながらも「教習でMT車を用いてはいけない」とは明記していません。具体的な教習カリキュラムの作成については現場に丸投げしているため、改変に先立って自動車教習所と教習生は今回の改変に困惑している模様です。

【画像】2025年4月1日以降クルマに貼る“必要のない”ステッカーです

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コメント

1件のコメント

  1. でも、就職時にAT免許だと営業車運転できないから、職種選択に制限されるのでは?

    営業車が全部ATに変わっているとは思えない。軽なんかは特に