「マルチすぎる兵器」もう限界? 戦車も戦闘機も“機能分散”に逆戻りする、もっともな理由

世界の陸空両方で動いている次世代兵器プロジェクト。これらは有人の本体兵器以外に、サブとして無人兵器の運用も想定されています。ひとつで「なんでもこなす」兵器にはなり得ない――そこには切実な理由がありました。

戦車の後継、でも「戦車」じゃなさそう…?

 2025年1月24日、ドイツのクラウス・マッファイ・ヴェクマン(KMW)とラインメタル、フランスのネクスターとタレスが、新型戦闘車両システム「MGCS」(Main Ground Combat System)を開発する合弁企業の設立に合意しました。

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レオパルト2の車体とルクレールの砲塔をつなげたMGCSのコンセプトモデル(画像:KNDS)

 合弁企業の本社はドイツのケルンに置かれ、株式は各社が25%ずつ取得する予定となっています。KMWはレオパルト2戦車、ネクスターはルクレール戦車の開発にそれぞれ携わった企業、タレスは防衛用システムや電子機器の開発を行ってきた企業ですから、ドイツとフランスは“オールスターキャスト”でMGCSの開発に取り組むと言って差支えないでしょう。

 MGCSはドイツ連邦軍のレオパルト2戦車と、フランス陸軍のルクレール戦車をそれぞれ後継する戦闘車両と位置づけられています。

 そのためMGCSは両戦車を後継する“新戦車”と報じられることも多いのですが、「メイン」という名称が物語るように、複数の有人車両と無人車両などを組み合わせた陸上戦闘システムの中核と位置づけられており、レオパルト2やルクレールのような、いわゆる主力戦車(MBT)とは、毛色の異なる車両となる可能性もあります。

 筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は2022年6月にフランスのパリで開催された「ユーロサトリ2022」で、KMWとネクスターの合弁企業であるKNDSの展示ブースでMGCSの取材をしたのですが、展示ブースに置かれていたMGCSのコンセプトモデルは、レオパルト2などの現用戦車より小ぶりな車両のような印象を受けました。

 KNDSの担当者はこのモデルについて、研究開発の過程で生まれた複数のアイデアを形にしたものの一つであり、この形で決定したわけではないと述べていました。

 MGCSの構想はKNDSが誕生した2015年ごろから存在していましたが、開発を行う合弁企業の設立に10年の時間を要してしまった背景としては、ドイツ、フランスの政府や軍、産業界の思惑の違いもさることながら、MGCSのコンセプトがなかなか固まらなかったという理由もあるのではと感じます。

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