世界最強の空戦能力を求めたのに… F-15戦闘機が多用途性に走り出したワケ「空自、お主もか!」
空戦能力に特化した戦闘機として生まれたF-15「イーグル」ですが、いまや対地・対艦攻撃にも優れた多用途戦闘機になっています。空自のF-15も近代化改修で対地攻撃能力を付与するとか。なぜ性格を大きく変えるようになったのでしょうか。
戦闘機の多用途化に貢献した「黒子」とは?
戦闘機の多用途化が進んだ裏には、デジタル技術の急速な発展がありました。アナログ式の電子機器は、レーダーやミサイルなどの兵装を制御するためにはハードウェアによる複雑な配線が必要であり、機能の追加や変更は困難でした。しかしコンピューターの性能が向上すると、ソフトウェアによって様々な機能を制御できるようになりました。
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ゲーム機がソフトによって全く別の動きを見せるように、戦闘機も同じハードウェアによって違う機能を実行可能なのです。これによって空対空戦闘と、空対地攻撃能力を同時に実現しても「1ポンドたりとも増やす必要はなくなった」とも言えるでしょう。
良い意味で皮肉なことに、純制空戦闘機だったはずのF-15は、その大きな機体と強力なエンジンパワーによって、搭載物を空対空ミサイルから追加の燃料タンクや誘導爆弾、巡航ミサイルに置き換えることで、優れた攻撃機へ生まれ変わることができました。
こうして生まれた多用途戦闘機モデルが、F-15E「ストライクイーグル」です。同機は従来のF-15とは異なり、爆撃能力を備えた派生型として多用途戦闘機の道を歩み始めます。F-15Eは湾岸戦争やアフガニスタン紛争などにおいて、その精密攻撃能力をいかんなく発揮し、実戦での有効性を証明しています。
これからもF-15シリーズは、その大きな搭載量を活かした多用途戦闘機の一つの究極形として、F-35などの新鋭戦闘機を補完しつつ重宝されてゆくことになると考えられます。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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