「戦車を撃破した!」→残念それは風船だ!? ウクライナの侵攻でも現役「ダミー兵器」のすごさ 騙し合は日々進化!
ロシアによるウクライナ侵攻では、ドローンや無人機によるハイテク戦闘が行われていますが、極めて原始的な戦法も現役です。そのひとつがバルーンやハリボテを用いたデコイです。今でもこうした欺瞞工作の効果はあるようです。
ハイテク化した戦争でも単純なローテクは効果を発揮する?
こうした方法が特に大規模に行われたのが、1944年6月6日に実施されたノルマンディー上陸作戦の偽装工作です。イギリスをはじめとする連合軍は、大規模な戦車部隊や車両群をハリボテで作り、イギリス南部へ展開。上陸目標はノルマンディーではなく、パ・ド・カレーだとドイツ軍に思い込ませたのです。
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戦後、高性能なレンズやカメラなど光学機器が発展しても、一瞬でその目標が本物か判断することは困難な場合が多く、1998年2月から翌年の6月まで行われたコソボ紛争で、アメリカを中心としたNATO諸国の空爆に対してユーゴスラビア軍が、大量のダミー戦車を投入し対抗しました。こうしたダミー兵器の目的は、わざと目立つところに置き、高価なミサイルや爆弾を無駄に使わせることです。
今回のウクライナ侵攻でも、ロシア、ウクライナ両陣営がダミー兵器を用いています。ロシアがT-72やS-300地対空ミサイルを模したバルーンで攪乱(かくらん)すれば、ウクライナ側も高機動ロケット砲システム(HIMARS)や、M1「エイブラムス」を模したバルーンで対抗するといった状態です。2022年2月の侵攻開始からすぐに、ドローン技術の発展により自爆ドローンの攻撃が注目されるようになりました、バルーンで模した車両は、この攻撃に対しにかなり有効です。
騙し方も巧妙になっています。ただのダミーではなく、バルーンの中にヒーターを入れることで、エンジンが動いていると勘違いさせたり、発信専用の小型レーダー装置を用いて、本物のレーダー装置が発するような信号を出して錯覚させるような装備も使われているケースもあります。ウクライナ軍ではさらに、高品質なオトリの開発も行っており、パトリオットミサイルシステムを模した装備で、レーダーが回転している機構まで再現しているハリボテなども製作しています。
戦場という過酷な環境では、モニター越しにこれらの偽物を攻撃対象か否か判断するのは熟練のオペレーターでないと困難といわれおり、ハイテク化した戦闘でも防御手段や欺瞞の方法として変わらず機能しています。
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