なぜ戦闘機のエンジンノズルは穴の大きさが変わるんですか? 旅客機は固定なのに…、意味あるのでしょうか
ジェット戦闘機のエンジンノズルが、飛行状態によって開いたり閉じたりするのはなぜなのでしょうか。それこそアイドリング時と離陸時では穴の大きさが違います。その一方で旅客機のジェットエンジンは変わりません。なぜなのでしょうか。
旅客機のジェットエンジンはなぜノズル動かないの?
可変断面積ノズルの歴史は意外と古く、1940年代前半に実用化された世界初のジェット戦闘機であるメッサーシュミットMe262のエンジンで、すでに同種の機構が盛り込まれていました。

ただし、一方で旅客機のエンジンノズルは戦闘機のように可変せず、どの機体でも固定されています。これは旅客機が巡航速度での効率を最重視して設計されているためです。長時間の巡航飛行においてエンジン出力は一定であり、その最適な推力条件を満たすノズル断面積が設計段階で決定されます。ノズルの可変機構は重量や製造コストの増加、メンテナンスの手間を招くため、旅客機では必要とされません。
ただし、旅客機の中でもほぼ唯一の例外となるのが超音速旅客機「コンコルド」です。「コンコルド」は巡航速度がマッハ2という異例の高速飛行を行うため、旅客機でありながらそのエンジンにはアフターバーナーが取り付けられており、可変断面積ノズルが採用されています。なお「コンコルド」と同じく超音速旅客機であるTu-144は、可変断面積ノズル型と固定断面積ノズル型の2種類が存在します。
今後、航空祭やゲームを楽しむ際にはノズルの動きに注目して観察すると、その精巧な機構や挙動の妙を、より一層深く味わえるかもしれません。特にF-15戦闘機はノズルの動作音が非常に大きいことで知られ、エンジン出力を大幅に変化させると「キュルルル」という独特の音が響き渡ります。実際、「エースコンバット」でもその音は再現されているので、ぜひ気にしてみてください。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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