「雪国の鉄道は雪に強い」「都心の鉄道は大混乱」本当にそうか? 変わりつつある“常識”
都心の鉄道はわずかな雪でも運行が大きく乱れがち。一方、雪に強いと言われる豪雪地帯の鉄道でも、近年は大雪で運休するケースが増えています。雪に弱い鉄道と強い鉄道、その違いを決めるのは何なのでしょうか。
雪に強いのは「理由がある」
一方、ほくほく線の六日町―犀潟間は通常運転をしていました。これは長大トンネルが多いこと、踏切がほぼ無いこと、雪が溜まらない高架橋、融雪設備を備えた駅、分岐器に落ちた雪を温水で飛ばす装置など数々の対策を打っていることもあります。
古い鉄道路線の設備改良は列車の走らない間しか工事ができないのでコストと時間がかかりますが、ほくほく線のように比較的新しい路線で、建設時に雪対策が組み込まれていると有利なのです。とはいえ、ほくほく線も全線約60kmのうち18kmは除雪が必要な区間があり排雪モーターカーでの除雪が行われています。
山形新幹線(奥羽本線)の福島-米沢間も豪雪地帯で古い路線ですが、こちらは分岐器にスノーシェッドが設けられ、除雪にも相当な労力を投入しています。雪が降っても何事もなく列車が走る影には、こうした投資や労力がかかっているのです。
他方、近年では道路除雪が充実し、道路は開通しているが鉄道は不通という、かつてからすれば逆転現象も各地で見られるようになりました。
都市部の鉄道はやっぱり「雪に弱い」 社会が変わるしかない?
さて、都心の鉄道はどうでしょうか。雪装備としては、分岐器の凍結防止ヒーターやカンテラ、ブレーキ制輪子を常時車輪に当てて制輪子と車輪の間に氷雪が詰まらないようにする耐雪ブレーキなどが見られます。

十数cmの雪が降るのも数年に一度あるか無いかという状態で、雪国のような対策を施すのは現実的ではありません。使われない設備でも、装備すればメンテナンス費もかかります。また車両数もローカル線に比べて桁違いに多いので、車両に排雪装置などを付けるだけでも相当な投資となりますし、雪に慣れていない職員が大多数です。安全を守りつつ運行の安定を図る中で、投資が巨額になるのを防ぎつつ、気まぐれな気象と向き合わないとならない難しさがあります。
過疎高齢化の人手不足に直面する地域鉄道、巨額投資と異常気象に向き合う都心の鉄道、それぞれの苦労があります。除雪が追いつかず混乱するのは短期間なので、計画運休で混乱を避けようという動きも始まりました。
ただ、雪の季節は大学入学共通テストや成人式、高校の期末考査、卒業式などとも重なります。最も苦しい時期に全国一斉に重要な行事が行われているので、社会全般からの見直しも必要になるかもしれません。
Writer: 山田和昭(日本鉄道マーケティング代表、元若桜鉄道社長)
1987年早大理工卒。若桜鉄道の公募社長として経営再建に取り組んだほか、近江鉄道の上下分離の推進、由利高原鉄道、定期航路 津エアポートラインに携わる。現在、日本鉄道マーケティング代表として鉄道の再生支援・講演・執筆、物流改革等を行う。
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