「伝説のドア」を備えた国鉄気動車がJRから引退した“裏事情”とは? もうすぐ還暦 国内唯一の現役車両

車体外側に備えた「外吊りドア」がユニークな旧国鉄の気動車キハ30。その唯一の乗れる車両が、岡山県で健在です。“還暦”間近となったこの車両が、JR東日本から岡山のローカル鉄道にやってきたのには“裏の事情”がありました。

ドアで思い出す「首都圏JRローカル線」

 貴重な車両をひと目見ようと、特別運行日には大勢の鉄道ファンが押しかけました。「X」(旧ツイッター)の公式アカウントを「国鉄水島計画 邁進中」と名付けた水島臨海鉄道だけに、愛好家の“鉄分補給”に積極的に応じてくれました。

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水島臨海鉄道の車掌がキハ30-100の乗降口に増設した扉開閉スイッチを操作する様子(大塚圭一郎撮影)

 車掌は車内を巡回する際にカメラを持った乗客らに「写真を撮っても構いませんので、どうぞ」と語りかけ、車内放送で「アルプスの牧場」のオルゴール音も鳴らしました。こうした「神対応」を目の当たりにした愛好家はSNSなどで発信しようとする意欲がわき、それらの投稿を見て「水島臨海鉄道を訪れよう」と思う人も出てくる好循環が生まれるに違いありません。

 筆者も含めて多くの愛好家が開閉する様子を撮影していたのが、キハ30を含めたキハ35系のチャームポイントとなっている外吊りドアです。低いプラットホームに対応するため乗降口にステップを設けたキハ35系の場合、日本の一般的な通勤形車両に使われている戸袋付きのドアにすると、車体の強度不足になってしまう問題がありました。一方、戸袋付き扉にするために補強した場合には車体重量が増えてしまいます。そこで、簡素な外吊りドアが採用されました。

 水島臨海鉄道への移籍に伴って改造されたのは、片側当たり3か所ある乗降口のうち前後の2か所へのドア開閉スイッチの増設です。これは車掌が乗務する場合に利用者から切符を集めたり、精算したりする際、それぞれの駅の出入口に近い乗降口で扉を開閉できるようにするためです。

 筆者が乗車した日はキハ30-100と、車体を赤色(新首都圏色)にしたキハ37-103の2両編成で走行。久留里線時代以来となるキハ30のロングシートに往復とも揺られ、天井に並んだ扇風機を眺めていると元JR東日本役員から聞いた逸話も思い起こしました。

【写真】これがキハ30の「伝説のドア」です(写真)

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