「伝説のドア」を備えた国鉄気動車がJRから引退した“裏事情”とは? もうすぐ還暦 国内唯一の現役車両
車体外側に備えた「外吊りドア」がユニークな旧国鉄の気動車キハ30。その唯一の乗れる車両が、岡山県で健在です。“還暦”間近となったこの車両が、JR東日本から岡山のローカル鉄道にやってきたのには“裏の事情”がありました。
キハ30引退の“決定打”とは
久留里線でキハ30が現役だった2011年、筆者が当時のJR東日本役員に久留里線のキハ30の去就を尋ねると「引退させる」とキッパリ言われました。「古くなっているからですか?」と尋ねると、「それもあるけれども…」と退役の“決定打”をこう打ち明けました。

「労働組合からクーラーがない車両で夏も働くのは過酷で、新しい車両に置き換えてほしいと強い要望があった。事情を理解し、応じることにした」と説明しました。確かにキハ30には冷房装置が付いておらず、客室と運転席のいずれも扇風機を備えているだけです。
この言葉の通りJR東日本は2012年9月、久留里線の車両を「全て新型車両E130に置き換えます」と発表し、同年12月1日に全車置き換え。キハ30だけではなく冷房装置が付いたキハ37、キハ38も消えました。
水島臨海鉄道はこれらのキハ30とキハ37、キハ38の計6両を譲り受け、2014年5月に「出発式」を開催して運用を始めました。水島臨海鉄道はキハ30が「大人気」だと実感しながらも、冷房装置がないため暑い時期には走らせていません。
多客期に特別運行をしているのを踏まえると、2025年の4月下旬から5月上旬にかけてのゴールデンウイーク期間も活躍するかもしれません。「X」の公式アカウントをフォローして“国鉄化計画”の最新情報を待ちたいと思います。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
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