「赤字の鉄道は民営化しろ!」←どっかで聞いた話だぞ? “政商”イーロン・マスク氏の提案が効果的でない理由 のめば“劇薬”

トランプ政権で要職を務めるイーロン・マスク氏が、アメリカの郵政や鉄道の民営化を訴えました。18年前と38年前の日本で起きた出来事と似通う部分がありますが、効果はあるのでしょうか。

「郵政も鉄道も民営化!」日本の「あの政権」にソックリ?

 アメリカのドナルド・トランプ政権で政府効率化省(DOGE)のトップに就いた“政商”のイーロン・マスク氏が、全米鉄道旅客公社、通称アムトラックを民営化すべきだと訴えました。ただ、慢性赤字のアムトラックをただ民営化しても効果的ではないことは日本の先例が証明しています。

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アムトラックの高速列車「アセラ」。「北東回廊」を結ぶ(大塚圭一郎撮影)

 マスク氏は2025年3月5日のイベントで「論理的に考えれば、民営化できるものは全て民営化すべきだ」と主張。対象として米郵政公社(USPS)とアムトラックを例示して「可能な限り全てを民営化すべきだ」と訴えました。アムトラックは、中国などと違って専用軌道を走る高速鉄道を持っていないとして「恥ずかしいことで、悲惨な状況だ」と切り捨てました。

 マスク氏がUSPSを挙げたことで、日本では小泉純一郎元首相の郵政民営化と重ね合わせる向きがありました。また、小泉政権の閣僚として「聖域なき構造改革」の一翼を担い、規制緩和を進めたことで「運輸業などで過当競争をもたらし、安全軽視の新興企業を助長させた」(運輸会社首脳)との批判を浴びている竹中平蔵・元経済財政担当相とマスク氏が似ているとの見方が出ています。

 しかし、民営化で発足した日本郵政の2024年9月中間連結決算で郵便・物流事業の営業損益が947億円の赤字だったように、民営化は収支改善の“魔法のつえ”ではありません。また、特に地方では郵便局の相次ぐ閉鎖などでサービスが低下したとの批判も出ています。

 2024会計年度(23年10月~24年9月)でUSPSは最終的な損益を示す純損益が95億2000万ドル(1ドル=150円で1兆4280億円)の赤字で、アムトラックの純損益も18億940万ドル(同2714億円)の赤字に陥っています。ともに慢性的な赤字体質で、そのまま民営化しても軌道に乗るはずがありません。

【これぜんぶ民営化するの…?】米アムトラックの路線図&「わずかな黒字区間」(地図/写真)

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