「赤字の鉄道は民営化しろ!」←どっかで聞いた話だぞ? “政商”イーロン・マスク氏の提案が効果的でない理由 のめば“劇薬”

トランプ政権で要職を務めるイーロン・マスク氏が、アメリカの郵政や鉄道の民営化を訴えました。18年前と38年前の日本で起きた出来事と似通う部分がありますが、効果はあるのでしょうか。

「アムトラック・ジョー」への意趣返し?

 マスク氏がアムトラックをやり玉に挙げた背景には、2020年の大統領選で共和党候補だったトランプ氏を破った民主党候補のジョー・バイデン前大統領への「意趣返し」だという見方もあります。

Large 20250313 01

拡大画像

アムトラックが発着するニューヨークのペンシルベニア駅(大塚圭一郎撮影)

 バイデン氏は上院議員時代の36年間にわたって首都ワシントンと自宅のあるウィルミントンを往復約3時間かけてアムトラックの電車で通い、元乗務員は「乗務員や他の乗客に気さくに話しかけ、分け隔てなく接していた」と証言します。副大統領だった2011年には、地元のウィルミントン駅が「ジョセフ・R・バイデン駅」と命名されました。

「アムトラック・ジョー」の愛称で親しまれたバイデン氏は鉄道の重要性をよく理解し、大統領在任中の2021年11月に成立したインフラ投資法に基づいて鉄道インフラの改善に力を入れました。民主党は労働組合を支持基盤としており、政府関係者は「アムトラックの労働組合も、バイデン氏と民主党を支持してきた」と指摘します。

 この話につながるのが、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が元JR首脳から聞いた「中曽根康弘首相(故人)による(1987年の)国鉄分割民営化は、国鉄労働組合(国労)の主流派の支援を受けていた日本社会党(現・社会民主党)をつぶすことを狙っていた」という言葉です。社民党は今や国会の衆議院、参議院で計3議席しかなく、中曽根氏のもくろみ通りの結果になりました。

 短文投稿サイト「X」(旧ツイッター)を2022年に買収後に従業員の8割に当たる約6000人を解雇し、DOGEのトップとして10万人を超える政府職員を削減したように「情け容赦ない首切り屋」(民主党支持者のアメリカ人)と忌み嫌われているマスク氏のことです。アムトラックを民営化することで経営体力を弱体化させ、民主党の支持基盤の労組を解体することを意図しても不思議ではありません。

【これぜんぶ民営化するの…?】米アムトラックの路線図&「わずかな黒字区間」(地図/写真)

最新記事

コメント