135年の歴史に幕「渡し船銀座」から消える航路 車で乗ってわかった「替えが利かない」役割

広島県尾道市の「尾道水道」を交う渡船のひとつ「福本渡船」が、2025年3月31日で廃止されます。昭和な愛車で昭和に竣工された船に乗る体験をすべく現地へ向かいました。尾道の渡船の実情にも迫ります。

自転車で渡っちゃダメ!と自治体が念押しする尾道大橋の実情

 最後に、前述のように渡船に大打撃を与えたという尾道大橋を渡ってきました。

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尾道本通り商店街は昭和レトロな店とおしゃれな飲食店が並び、観光客を惹きつける尾道の名所。尾道訪問の際はぜひ訪れたい場所だ(画像:遠藤イヅル)

 尾道から四国の愛媛県今治市の間には、「世界7大サイクリングルート」に選定されている「しまなみ街道サイクリングロード」が整備されており、数多くのサイクリストが訪れる「サイクリストの聖地」となっています。尾道大橋はその起点となる橋に見えます。

 しかし尾道市のホームページでは、尾道水道を渡る際は尾道大橋ではなく渡船の利用を推奨しています。その理由は、尾道大橋の車道幅が7.5mしかない片側1車線で交通量も多く、歩道を走行するとしても、歩道自体が狭いだけでなくケーブルの基部が歩道上に置かれているため、事実上自転車の走行が困難というもの。

 実際に歩道を歩いてみましたが、たしかにケーブルが歩道の真ん中から生えている状態で、自転車で走るのは難しいことがわかりました。

※ ※ ※

 福本渡船のスタッフに話を聞いたところ、往時に比べると利用者は大きく減っているものの、現在でも1日あたり歩行者約400人、車両約600台が乗っているといいます。

 ここまで記してきたように、3航路は発着する桟橋が異なっていて、それぞれの渡しにそれぞれの利用客がいる状況です。中でも福本渡船は、少々大回りになる上に渋滞もある尾道大橋を嫌って、尾道水道を手軽に渡船でクルマを渡したい利用客と、運賃の安さから利用していた通勤通学客などに重宝されていました。

 今後は125cc以上のバイクユーザーも、遠い尾道大橋か兼吉渡しに迂回する必要があります。たしかに2航路と尾道大橋が残るため、福本渡船の代替は可能なのかもしれませんが、不便を強いられる人は少なくないと思われます。しかし尾道市では、福本渡船をおのみち渡し船には引き継がせないと明言しています。

 福本渡船の廃止まで残りあとわずか。日常に渡船がごくありふれた輸送手段として存在し、街のいち風景となっている尾道で、この航路も残せないものか、と強く感じました。

【めちゃくちゃレトロ!】「尾道の渡し船」の全て乗ってきた!(写真55枚)

Writer:

1971年生まれの自動車・鉄道系イラストレーター/ライター。雑誌、WEB媒体で連載を多く持つ。コピックマーカーで描くアナログイラストを得意とする。クルマは商用車や実用車、鉄道ではナローゲージや貨物、通勤電車、路面電車、地方私鉄などを好む。

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