特別な電気機関車? ダイヤ改正で引退した「銀釜」とは何者か 車体が銀なワケ
2025年3月のダイヤ改正では、JR貨物で使用されていた「銀釜」ことEF81形303号機が定期運行を終了しました。この機関車はなぜ愛称が付けられ、またどのような車両だったのでしょうか。
九州内での活躍 2014年に網羅!
国鉄の分割民営化に伴い、1987(昭和62)年にJR貨物の車両となりますが、JR貨物への移行を前にした1986(昭和61)年には、重連総括制御に改造されます。これは、機関車を2両連結した重連の状態でも、あたかも1両の機関車として運転できる機能で、この改造によって重量のある貨物列車でもけん引できるようになりました。

関門トンネル内には最大22‰の勾配(水平方向に1km進んで22m上る〈下る〉坂道)があり、重たい貨物列車をけん引するには機関車1両だけでは力不足だったのです。
JR貨物に移行してからは、ほかのEF81形も加わって、九州内での活躍が増えます。1988(昭和63)年からは福岡貨物ターミナル(福岡県福岡市)まで乗り入れ、その後の定期運行では2010(平成22)年、鹿児島本線の八代駅(熊本県八代市)と長崎本線の鍋島駅(佐賀県佐賀市)まで活躍の場が拡大しました。しかし2012(平成24)年、関門トンネルを走行して本州へ乗り入れる役目を後継の機関車に譲り、以後は九州内の交流電化区間だけで使用されるようになりました。
2013(平成25)年には日豊本線の南延岡駅(宮崎県延岡市)へ、2014(平成26)年には鹿児島駅まで乗り入れ、南九州に進出して九州全域を網羅するほどにまで活躍の場は拡大。ただ、これらはあくまでも定期運行のハナシで、鹿児島駅には2010(平成22)年頃に302号機が入線した実績もあります。
こうして走行するエリアが拡大する一方、老朽化によってEF81の淘汰も進められました。304号機は2015(平成27)年頃に廃車となり2020年に解体されたほか、301号機と302号機も2016(平成28)年頃に廃車となり、301号機は2021年に、302号機は2020年に解体されています。以後は303号機が最後の「銀釜」として残っていたのです。
なお、今回はJR貨物からEF81形自体の定期運行も終了しています。以後は臨時の貨物列車やほかの機関車の代わりに使用される程度となり、このままフェードアウトとなりそうです。
「銀釜」は事実上の引退となりましたが、後継のEF510形300番代には銀色の車体色が引き継がれています。
Writer: 柴田東吾(鉄道趣味ライター)
1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。
EF10形も一部は関門トンネル用でした。