「まとめて運べば安くなる」を徹底追及する海外/「汗と涙の人海戦術」で人手不足の日本 物流の“深刻な差”どうして?【物流と鉄道“失われた30年”前編】
この30年で国際物流は急激に伸長した一方で、日本国内の物流は人手不足が深刻、でも貨物量は微減、JR貨物の輸送量は半減と、海外にかなりの差を付けられてしまいました。一体なぜでしょうか。3回の連載から紐解きます。
「大きな港」を作らなかった日本 その結果…!
この頃(1990年代)から日本は不思議な動きを取ります。地方分権が謳われ、各地に小さなコンテナ港を分散して建設しだします。

当然、1港あたりの取扱量は小さくなります。世界物流の規模が拡大するなか、貨物が少ない港には幹線航路が立ち寄らなくなりつつあります。日本向けは釜山(韓国)や上海(中国)でコンテナをフィーダー航路に積み替えるので、その分リードタイムも伸びました。
そして、日本では海上コンテナを最終目的地へ運ぶドレージ輸送や、倉庫でコンテナから貨物を卸してトラックで運ぶ輸送網が出来上がりました。ただ、この過程でほぼ連携がなされていないのが“鉄道”です。
港と鉄道を結ぶオンドックレールは、欧米やアジア・ロシア・中国など世界各地にあるのですが、日本だけは皆無という異様な状況になっています。コンテナ革命が港で止まってしまい、日本の陸運は労働集約産業のままに留まっているのです。
鉄道や内陸水運に比べれば、トラックは労働者1人あたりの輸送量が少なく労働生産性は低くなります。さらに、国内のトラック輸送では運転手による手荷役が業界慣習として残っていますので、その間、トラックも運転手も次に行けず回転率は低いままです。
以上が欧米と日本の仕組みの違いです。海外の物流コストが下がり貨物量は激増する中、国内陸運は微減で推移し、労働者も不足して「2024年問題」となりました。このままでよいのでしょうか。
次回は、「失われた30年」の原因その2、“海外では設備投資が行われ、日本では進まなかった原因と考えられる理論と政策”について紹介します。
※この記事は2024度「第24回 貨物鉄道論文」最優秀賞「陸海一貫インターモーダル輸送の可能性と社会効果」(金沢大学 伊東尋志〔経済学博士課程 元えちぜん鉄道専務〕/合同会社日本鉄道マーケティング 山田和昭共著)の内容と、伊東氏とのディスカッションを元に構成したものです。
Writer: 山田和昭(日本鉄道マーケティング代表、元若桜鉄道社長)
1987年早大理工卒。若桜鉄道の公募社長として経営再建に取り組んだほか、近江鉄道の上下分離の推進、由利高原鉄道、定期航路 津エアポートラインに携わる。現在、日本鉄道マーケティング代表として鉄道の再生支援・講演・執筆、物流改革等を行う。
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