「元西武電車の楽園」がいよいよ見納め? 車両置き換えで“JR東海っぽく”なっていくローカル私鉄 でも“東武”もいる!?
三岐鉄道の三岐線に元JR東海の5000系電車が登場し、2025年春から大きな変化が見込まれています。単なるローカル私鉄のイメージだけでは終わらない、三岐線の“今”ならではの魅力と楽しみ方とは。
会えたらラッキー? 「幻」の車両
三岐鉄道の大きな特徴といえば、貨物輸送も行っていることです。今では私鉄の貨物列車はすっかり少なくなってしまいましたが、三岐線の富田~東藤原間ではセメントやフライアッシュ・炭酸カルシウムなどを運ぶ貨物列車が運転されています。
三岐線内を牽引(けんいん)する電気機関車は、ED45形9両とED5081・ED5082。このうちED5081・ED5082は東武鉄道から譲り受けたものです。いずれも2両1組の重連で運用され、迫力ある姿が魅力です。
塗装は茶色をベースに黄色い帯を巻いていますが、ED451だけは茶色一色の塗装をまとっています。これは2024年秋、三岐線の電化70周年を記念してかつての茶色塗装をイメージして塗り替えられました。1両だけの塗装であるうえ、他の機関車と共通で使われるため、どの列車に充当されるかは分かりません。出合えるかどうかは運次第です。
そして三岐鉄道にはもう1両、「幻」ともいわれる電気機関車のED301が存在します。普段は東藤原駅近くの工場内で貨車の入換作業に従事しているため、一般の人が目にすることはありません。外へ出るのは数か月に一度の検査で保々へ来たときなど、極めて稀なので「幻」といわれています。見た目は灰色にオレンジ色の帯を巻いた凸型。もし見かけたら相当な幸運の持ち主といえるでしょう。
ちなみに東藤原駅の北側、西野尻方面には太平洋セメントの藤原工場が広がっており、三岐線はこの間を縫うように走っています。東藤原~西野尻間を乗車していると、ローカル線の風景から突如工場の中へ迷い込んだかのような景色に変わり、非日常感を味わうことができるのでおすすめです。
新型の5000系は、元はJR東海の211系です。譲渡された211系は、5000系への改造が今後も徐々に進む見込みですが、改造前の湘南色帯の211系が数多く留置される様子や三岐鉄道の車両と顔を合わせるシーンは“今”ならでは。個性あふれる車両や沿線風景とともに期間限定の光景を楽しめます。
Writer: 和田 稔(鉄道ライター)
幼少期、祖父に連れられJR越後線を眺める日々を過ごし鉄道好きに。会社員を経て、現在はフリーの鉄道ライターとして活動中。 鉄道誌『J train』(イカロス出版)などに寄稿、機関車・貨物列車を主軸としつつ、信号設備や配線、運行形態などの意味合いも探究する。多数の本とNゲージで部屋が埋め尽くされている。
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