「超高高度飛ぶ漆黒の偵察機」結局何だったの…? 実は軍用機の歴史を変えた経緯とは

ソ連上空で撃墜される事件を契機に、当時大きな外交問題に発展したアメリカの高高度偵察機「U-2」。実は軍用機をめぐる用兵思想に、大転換をもたらした機体でもあります。

「鉄のカーテン」破るにはめっちゃ高いトコ飛べば良くね?

 1960年5月1日、アメリカの高高度偵察機「U-2」がソ連上空で撃墜される事件が起きました。この事件は当時の米ソ間で大きな外交問題になったのはいうまでもありませんが、この事件を契機に軍用機をめぐる用兵思想に大転換をもたらしました。一体何が起きたのか、当時を振り返ってみましょう。

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U-2偵察機(画像:アメリカ空軍)。

 冷戦下の1950年代、旧ソ連や東ヨーロッパを中心とした共産圏国家の軍事情報は秘密のベールに包まれ、その境界線は「鉄のカーテン」と呼ばれていました。その「カーテン」の内側の情報を収集する唯一の方法が、偵察機による上空からの写真撮影でした。ただ当時の偵察機では航続距離や高度などで限界があり、現在のような偵察衛星も当時はありませんでした。

 そこで計画されたのが、ソ連戦闘機の監視網よりも高い高度を飛行できる偵察機を飛ばすという方法です。

 ロッキードの主任技術者ケリー・ジョンソンはグライダーのような機体に強力なジェットエンジンを搭載することで、現代の旅客機のおおよそ2倍の飛行高度となる、高度7万フィート(約2万1300m)で飛行可能な機体を設計しました。この機体に興味を示したのがCIA(アメリカ中央情報局)でした。同機関はソ連とその同盟国の軍事情報を熱望していたのです。

 CIAの予算が投じられ開発された機体は偵察機としての正体を隠すため、「U-2」と命名され表向きはNACA(NASAの前身)の高高度気象観測機とされていました。U-2は1955年に初飛行し、翌年1956年からは「鉄のカーテン」の内側で偵察飛行を開始しました。最初は西ドイツの基地から東ヨーロッパ諸国の上空を飛行したU-2ですが、その後、“ウラのミッション”を実施すべく、トルコ領内の基地からいよいよソ連上空の飛行も開始します。

 それに対抗すべく東側は、戦闘機を発進させてU-2の迎撃を試みました。しかし、U-2の飛行高度まで近づくことはできません。回を重ねる毎にU-2の飛行は東側の飛行場、軍用機の配備状況、ロケットやICBMの開発状況など多くの貴重な情報をもたらしました。

 こうした偵察飛行により、U-2の有用性が実証されたわけですが、それにともない搭載される機器も増えていきました。しかし機体重量の増加は飛行高度の低下に直結します。U-2にとって飛行高度の高さだけが唯一の安全策だったので、重量の増加は大きなネックとなりえます。

 そのため、エンジンをパワーアップして翼を大きくすることで飛行高度を維持することになりました。初期型が搭載していたJ57エンジンに代わり強力なJ75エンジンを搭載した最初の機体が厚木基地に配備され飛行が始まりました。

 この機体が1959年9月24日、神奈川県の藤沢飛行場に不時着。日本で「黒いジェット機事件」と知られるアクシデントを起こすことになりました。当該機のパイロットは新型エンジンにより高度記録を更新したものの、従来の機体よりも燃料消費量が多かったため燃料不足に陥り、結果として厚木基地の手前の藤沢飛行場に着陸したのです。

【画像】え…高度…。これがマジで発生した「日本上空を飛ぶU-2」の様子です

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