ウ軍F-16戦闘機の活動を阻む「厄介者」とは? 再確認されたロシア防空兵器の圧倒的な優越性 “排除ムリ”なワケ
ウクライナ空軍がF-16戦闘機を失ったと発表しました。2機目の損失となる今回の原因はロシア軍の大型地対空ミサイルS-400によって撃墜されたからと言われています。このミサイルが持つ圧倒的な性能とはどの程度なのでしょうか。
ロシア戦闘機の活動を阻むのもウ軍の地対空ミサイルか
今回の損失が示唆するのは、F-16の能力不足というよりも、ロシアのS-400が圧倒的に優秀だったという能力差です。そう捉えると、長射程の地対空ミサイルは、かなりの優位性を持っていると言えるでしょう。

現状これに対抗する手段は、S-400のような大型地対空ミサイルのレーダーは、地球の丸みから地平線の影となる低空を監視することができないという、レーダーの盲点を突いた低空飛行しかありません。
長距離無人機によってS-400を破壊した事例も存在するものの、現状ではS-400の優位は揺るぎません。SEAD(対防空制圧)作戦の徹底強化によってS-400を破壊しようとするなら、F-35のようなステルス戦闘機が必要になります。しかし、ウクライナへのF-35供与は現在のところ予定されておらず、S-400はウクライナ空軍の活動を制約する最大の障害として今後も立ちはだかることになるでしょう。
2022年に始まったウクライナとロシアによる全面戦争は、両者ともに相手の地対空ミサイル防空網が強力すぎて「航空優勢」を確保することができず、戦闘機が持つ強大な攻撃力を有効に活用することができないというジレンマに両陣営とも陥っているという点で、大きな特徴があります。
今後もウクライナ空軍への戦闘機供給は継続される見通しであり、F-16に続いてフランスが供与した「ミラージュ2000」の運用も始まっています。対するロシアもSu-35などといった高性能戦闘機の増産を進めていますが、S-400がウクライナ空軍の活動に制約をかけているように、ロシア空軍もまたウクライナ側のパトリオット地対空ミサイルシステムを始めとする防空兵器で同じく思うような地上支援ができずにいます。
こうした状況を鑑みると、地対空ミサイルが相手の航空機の活動に縛りをかけ続けるという状況は、当面変わることはないと考えられます。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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