ドイツで誕生「第2次大戦の最優秀プロペラ戦闘機」なぜ原型と全然違う名称に? じつは “ご褒美” 的な意味合いか

第二次世界大戦末期にドイツ軍が開発・運用したTa152戦闘機は「レシプロ戦闘機の最高峰」と称される機体だったとか。どういった点が優れていたのか、その出自からひも解きます。

原型はBf109の補完用戦闘機

 第2次世界大戦で、ドイツ空軍の戦闘機として多用された機種のひとつにフォッケウルフFw190があります。

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第二次世界大戦末期に誕生したTa152戦闘機(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。

「ヴュルガー」(ドイツ語で百舌鳥の意味)の愛称で知られる同機の最終進化系といえるのが、大戦末期に登場したタンクTa152です。ただ、派生型にもかかわらず、なぜ傑作機FW190の型番を引き継がず、全く関係ない「Ta152」と名付けられたのでしょうか。

「実用レシプロ戦闘機の最高峰」とも称されるほど高性能だったTa152について、その「命名の謎」も含めて見てみましょう。

 第二次世界大戦が始まる前、ドイツ航空省は1935年の同国の再軍備に向けて開発したメッサーシュミットBf109戦闘機を、高性能だとして高く評価していました。しかし一方で、戦争が勃発した際に、仮にその「心臓」であるダイムラー・ベンツ社製液冷エンジンの供給や、メッサーシュミット社の製造体制に問題が生じて同機が不足した場合に備え、その「保険」として、空冷エンジンを搭載した補助戦闘機を開発します。それがフォッケウルフFw190でした。

 Bf109が機体構造の面でややクセがあり、優れてはいるものの制空戦闘機としてしか使えないのに対して、Fw190は、頑丈で故障知らずの「何でも屋の使役馬」として使える機体として開発されます。その結果、本機はドイツ空軍の当初の想定だった「Bf109の補助」という役割を超えて、制空戦闘はもとより対地攻撃も可能な、今日のマルチロール・ファイターの祖先のような優秀な汎用戦闘機として重用されました。

 第2次世界大戦では、Fw190は予想通りの大活躍をはたします。しかし戦況は徐々にドイツ劣勢へと傾き、米英の重爆撃機の大編隊が、ドイツ各地を連日連夜24時間体制で爆撃するようになりました。

 そこで開発者のクルト・タンク技師は、Fw190に液冷エンジンのユンカースJumo213を搭載し、機体各部に改修を加えた空戦能力向上型のFw190D型を生み出します。D型は大戦後期に活躍しましたが、実は彼にとって同型は「通過点」であり、早い段階で「その先」も考えていたのです。

 こうして誕生したのがTa152でした。

【世界に1機だけ!】これが現存する唯一のTa152です(写真)

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