自衛隊の「顔」車両は“トルコ製いかが!?” コマツ撤退で国内開発× 決まらない後継選定に世界が熱視線

DSEI Japan 2025にトルコの装甲車メーカー2社が出展。コマツが撤退した装甲戦闘車両の後継選びをにらんだ動きと考えられます。日本には馴染みが薄く、一度は選から漏れたトルコ製車両ですが、今回は選ばれようとする気概も感じられました。

「トルコ」だから馴染み薄くてダメ? ならば…

 仕切り直しとなった軽装甲機動車の後継選定は、企業から情報提供を募っている段階なので、オトカ、ヌロルマキナの両社ともDSEI Japan 2025の場で防衛省・陸上自衛隊への提案は明言していませんでしたが、高い関心を持っているのは間違いありません。自社とその製品を防衛省・陸上自衛隊に知って欲しいという意欲を示していました。

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DSEI Japan 2023で展示された「ハウケイ」。軽装甲機動車の後継とはならなかった(竹内 修撮影)。

 オトカが大型模型を展示した「コブラII」は、価格の安さと汎用性の高さが評価され、2025年5月の時点でトルコを含む25か国と国際連合に採用された、ベストセラー軽装甲車「コブラ」の後継車両です。

 採用国の一つであるウクライナでは、ロシアとの戦いに「コブラII」が使用されていますので、防衛装備品の導入で重視される実戦での有用性証明、いわゆる「コンバットプルーフ」も十分にあると言えます。

 一方のヌロルマキナは「NSM-L」と「ドラゴン」という2種類の四輪駆動軽装甲車の大型模型の展示を行っていました。

 ヌロルマキナは2019年11月に開催されたDSEI Japan 2019にも出展しており、この時は、NMS-Lの原型であるNMSの実車を展示していました。その後、同社は軽装甲機動車の後継車両の選定コンペにNMSを提案し、その時は惜しくも選に漏れています。

 NSMは軽装甲機動車の後継車両に要求されていた能力はすべて充たしていましたが、トルコ製の防衛装備品は世界的な評価は高いものの日本では馴染みが薄く、その点が不利な要素の一つとなったと言われています。

 なお、DSEI Japan 2019にはトルコ本国のヌロルマキナとして参加していましたが、DSEI Japan 2025には同社のイギリス法人ヌロルマキナUKとして参加しています。これは事実上の準同盟国である同志国のイギリスを前面に出して、商戦を行う意図があるのではないかと考えられます。

 ドラゴンはトルコ本国では、トルコ語で「龍」を意味する「エジデル」と呼ばれています。あまり日本人にはなじみのないトルコ語の名前ではなく、英語で「龍」を意味するドラゴンという商品名を付けたのも、少しでも日本人に馴染みを持ってもらいたいという戦略に拠るものと思われます。

 コブラIIとNMS-L、ドラゴンの価格は不明ですが、ハウケイとイーグルに比べれば安価で、能力的にも陸上自衛隊の要求を充足できるものと思われます。この条件を充たせる車両は欧米以外でも開発・製造されていますので、オトカやヌロルマキナの他にも、これまで日本では馴染みの薄いメーカーが提案してくる可能性も高いと筆者は思います。

【よさそう?】これが自衛隊の「顔」になるかもしれない「トルコ製車両」です(写真)

日本唯一の防衛展示会「DSEI Japan 2025」

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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