護衛艦で運用した「異色の対潜ヘリコプター」自衛隊初の作戦用UAVが姿を消したワケ

海上自衛隊がこのたび艦載用の小型UAV「V-BAT」を選定しました。しかし実は約50年前、海上自衛隊は別の無人航空機を運用していたことがあります。15年ほどで運用を終了した知られざるUAVについて振り返ります。

アメリカよりもずっと長く運用していた海上自衛隊

 アメリカ海軍は1962年からDASHの本格運用を開始します。しかし当時のドローン技術の限界で、エンジンなど機体関係と遠隔操縦のどちらにも問題が生じることが間々あり、約760機が生産されたものの、うち約半数が故障や事故によって失われました。もちろん、実戦に用いられた機体はなく、そのため敵によって撃墜されたものもゼロです。とはいえ少数の機体が、ビデオ器材などを搭載し、ベトナム戦争で着弾観測や偵察などに用いられています。

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DASHと甲板上の操縦装置(画像:アメリカ海軍)。

 結局、損耗率の大きなDASHの任務は、射距離こそやや短いもののアスロックで代替できると判断され、アメリカ海軍では1969年に運用を終了。しかし1965年に運用調査を開始し、1967年から本機を18機導入した海上自衛隊は、たかつき型とみねぐも型の護衛艦に搭載して1979年まで運用を続けました。

 ちなみに海上自衛隊におけるDASHの運用実績は、アメリカ海軍と比べてはるかに良好でしたが、わずかな機数をアメリカ海軍よりも長期に渡って飛ばし続けたため、やはり約半数を故障や事故で損耗しています。

 なおDASHに見切りをつけたアメリカ海軍は、その後、狭隘なDASH用飛行甲板でも運用が可能な小型有人ヘリコプター・システム「LAMPS(Light Airborne Multi-Purpose Systemの略)」を採用することになります。

 DASHの運用終了から約半世紀。いまやドローンを含む無人航空機は驚異的な発展を遂げ、空対空戦闘にまで用いられようとしています。そしてロシアによるウクライナ侵攻では、陸海空のあらゆるシーンで多数のドローンが用いられており、さらに一歩進んで欧米などでは無人潜水艦まで登場するまでに至っています。

【写真】これが日本に唯一残る「DASH」です

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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コメント

1件のコメント

  1. 相変わらず校正が甘い。画像7枚目のキャプション『986年、ニューヨークに入港する海上自衛隊の護衛艦「ながつき」(画像:アメリカ海軍)。』の『986年』は『1986年』の誤り。せっかくの記事が台無し。編集部の猛省を望む。