「大砲ついていたら戦艦じゃないの?」←違います!「じゃあ、何て呼べばイイの?」じつは便利な呼び方あるんです
一般的には「戦闘に用いる船」=「戦艦」と捉えがちですが、厳密にはそうではありません。一方、「軍隊が使う船」=「軍艦」という定義も。「軍艦」と「戦艦」は何が違うのでしょうか。
戦艦が廃れてしまったワケ
1941年のマレー沖海戦で、日本の陸上攻撃機隊がイギリス海軍の戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋戦艦「レパルス」を撃沈したこと、そして戦争末期の1945年、沖縄へ向けて出撃した日本の戦艦「大和」がアメリカ海軍の空母艦載機隊によって撃沈されたことは、象徴的な出来事といっていいでしょう。

さらに、ミサイルの発達も見逃せません。大砲は発射した砲弾が風に流され、最初から狙い通りに命中させるのが難しいのに対し、ピンポイントに誘導できるミサイルは高精度の攻撃が可能です。
このため現代の海軍では、飛行機を運用する大型の空母や強襲揚陸艦などを除けば、小回りの利く駆逐艦やフリゲートといった小型の艦種が主力となっており、メインの兵装も主砲は1つ(1門)だけ、あとはミサイルを発射する装置が多くを占めています。私たちが艦船見学などで目にする「大砲を積んだ船」は、ほとんどが駆逐艦またはフリゲートだといっていいでしょう。
海上自衛隊の護衛艦も、国際的には「駆逐艦」もしくは「フリゲート」に分類されています。なお、大型で全通甲板を持つ「ひゅうが型」や「いずも型」は、文献によってはヘリコプター空母や軽空母とされる場合もあるようです。
戦術の変化によって時代遅れになり、世界中の海軍からすべて退役してしまった戦艦ですが、その大きさと多くの主砲を持つ特徴は「海軍の象徴」として非常にわかりやすく、各地で記念艦という形で保存されています。
日本でも、日露戦争でバルチック艦隊を打ち破った日本の連合艦隊旗艦を務めた戦艦「三笠」が、神奈川県横須賀市で「記念艦三笠」として一般公開されています。また、1945年に日本の降伏文書調印式が開かれたアメリカ海軍の戦艦「ミズーリ」は、ハワイの真珠湾で記念艦として、その姿を見ることができます。
砲が積んであれば何でも戦艦というわけではありません。加えて、いまや現役の戦艦は1隻もなく、日本で見られる戦艦は横須賀の「記念艦三笠」だけ、と理解していただければ幸いです。また軍艦には、戦艦や空母だけでなく巡洋艦や駆逐艦、フリゲートやコルベットなどまであります。それらの違いや成り立ちを知れば、見識は広がるのではないでしょうか。
Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)
ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。
…結局、「便利な呼び方」はなんなの?
「軍艦」?それとも「戦闘艦」でええの??