「環境問題?なんすかそれ」の時代に「1台売るだけで赤字」 全然伝わらなかった“世界初” 初代プリウスが尊い

複数の動力源を組み合わせたハイブリッド車の“世界初の量産モデル”こそ、1997年に登場したトヨタの初代プリウスです。ところが当時は、莫大なコストと情熱を注ぎ込んだにもかかわらず、その成果はなかなか市場に響きませんでした。

「1台売るだけで赤字」

 しかし、一般ユーザーの反応は想像以上に冷ややかなものでした。その最大の理由は、販売価格にありました。初代の販売価格は215万円で、車格が近いカローラの約1.5倍だったのです。燃費が良いといっても、価格ばかりが目立って一般ユーザーにはなかなか伝わりません。

 一方で、この215万円という価格は、ここまでのトヨタの研究・開発にかけた莫大な費用を考えれば破格の安値でした。噂では「215万円はバッテリーの価格だけで、他のパーツなどの費用は乗っていない」「1台売れるだけで赤字」ともいわれていました。それでもトヨタは、プリウスおよびハイブリッド車の普及を目指し、「21世紀へゴー(5)」として215万円という価格に設定したといわれています。

2代目で評価が広まり、3代目で爆発的ヒット

 結果的に初代プリウスは、6年間で国内では累計6万台程度の販売となり、芳しい成績を収めることはできませんでした。

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2003年登場の2代目プリウス。燃費は35.5km/Lをうたった(画像:トヨタ)

 しかし、アメリカ市場で評価を受け始めた2代目プリウスをきっかけに、日本でも3代目プリウスが爆発的なヒットを記録し、今日まで続く絶大な支持に繋がりました。また、プリウスが先陣を切ったことで、他メーカーもハイブリッド車を開発していったことを考えれば、国内外の自動車業界に与えた影響は計り知れないでしょう。

「環境と乗りもの」の問題は、各メーカーがいつか必ず取り組むべき課題だったでしょう。しかし、もしトヨタがいち早く取り組み、初代プリウスを発表していなければ、量産ハイブリッド車の登場は、さらに長い将来の話だったかもしれません。そう思うと、プリウスは自動車発明以来の革命的モデルだったのだと痛感します。

【え…!】これがプリウスより早い「世界初の市販ハイブリッド車」です(写真)

Writer:

1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。

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