“重工系”造船の落日――今治造船がJMUを実質“子会社化”するワケ 日本の造船にベストな選択?
今治造船がJMUの出資比率を60%に引き上げて子会社化すると発表しました。造船業界の再編が進む中、「総合重工系」から造船「専業系」への転換が加速しています。
JMUは「お客さん」でもある―出資企業の胸の内
しかし中国・韓国の造船業が台頭したことで受注競争が激化し、日本の造船シェアが下がり続ける中で生き残りを模索する必要が出てきました。JMUは舞鶴事業所での商船建造から撤退する一方で、今治造船と資本業務提携を結び、2021年1月には共同の営業・設計会社「日本シップヤード(NSY)」が発足しました。

そして2025年6月26日、JFEとIHIが所有するJMU株式の一部を今治造船が取得することで合意しました。現在の出資比率はJFEとIHIがそれぞれ35%、今治造船30%ですが、取り引きの成立後は今治造船が60%、JFEが20%、IHIが20%となる予定です。
JFEの広報は「専業系の今治造船のグループに入ることで、JMUを成長させていくための経営判断を、迅速に進めることができる」と説明しました。また、「JMUは鉄鋼の顧客であり、同社の成長は(JFEの)売り上げ増加につながります。もちろん株主としてのメリットもあります」と明かします。
IHIの広報も「国際競争力の強化という面が大きい」とJMUの今治造船グループ入りについて述べ「今後も艦艇など防衛事業でサポートしていきたい」と意気込みました。
今治造船の担当者は「中韓にシェアが奪われている」ことへの危機感が背景にあると説明した上で、グループ会社化することで「(NSYでの)営業・設計だけでなく現場や工場間での協業を進め、シナジーを発揮していきたい」と意気込んでいました。
ちなみに、今治造船の発表と同じ2025年6月26日には、常石造船も傘下の三井E&S造船を「常石ソリューションズ東京ベイ」へ、由良ドックを「常石由良ドック」へ、三井造船昭島研究所を「常石造船昭島研究所」へそれぞれ社名変更することを発表。すでに三井E&Sとの資本関係もなくなっており、歴史ある「三井造船」の名前を冠した社名が消滅します。
長い不況とそれに伴う再編を経て、かつて日本の造船業を牽引していた総合重工系の造船会社にとって、また一つの転機が訪れた日となりました。
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