3500ccエンジン280馬力の「爆速コンパクトカー」だ! でも走り屋は総スカン「悲運のトヨタ車」とは
2000年代の欧州では大排気量エンジン&軽量コンパクトなボディからなるホットハッチがブームとなっていました。その波に乗るように2006年にトヨタがリリースしたのが3.5リッターV6エンジンを積む「ブレイドマスター」でした。
足回りはフニャフニャ、ブレーキはプアな典型的「直線番長」
もちろん、どんな時代にもクルマにスポーティな味付けや走行性能を求めるクルマ好きはいるものですが、そのような彼らの心にも「ブレイドマスター」はまったく刺さりませんでした。

このクルマは「ゴルフR32」のような高性能なV6エンジンを搭載したにもかかわらず、シャシーや足回り、ブレーキは充分に強化されることがなかったのです。そのため、峠を攻めればフロントヘビーでドアンダーとなり、コーナーリング性能は低く、ストッピングパワーは不足していました。
すなわち、典型的な「直線番長」。峠やサーキットでは危なくてアクセルを踏めないクルマだったのです。しかも「ブレイドマスター」には、運転する楽しみがあるMTの設定がありませんでした。これではスポーツ派のユーザーに選ばれるはずもありません。
トヨタは「ブレイド」シリーズの開発コンエプトを「上位車種から乗り換える中高年のための小さな高級車を目指した」と発表しています。にもかかわらず、「ゴルフR32」に倣った「ブレイドマスター」を設定したことには、コンセプトのチグハグさを感じます。
おそらくはプレミアムコンパクトとしての「ブレイド」だけでは市場が小さいので、スポーツ派のユーザーを取り込むべく、当時ヨーロッパで流行っていた大排気量&小型ボディのホットハッチモデルを追加して販売台数の底上げを図ろうとしたのでしょう。こうしてラインナップされたのが「ブレイドマスター」だったと思われます。
しかし、欧州のライバルとは異なり、開発の手間もコストも十分にかけていないことで、カタログ数値だけを飾る “似非ホットハッチ” になってしまったわけです。そんな「仏作って魂込めず」なトヨタの姿勢がユーザーに見透かされた結果、「ブレイドマスター」の販売は低迷します。
こうして考えると、「ブレイドマスター」の失敗はまさに必然だったと言えるのではないでしょうか。
Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)
「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に
コメント