日産「マザー工場」が終了 じつは一度閉鎖された過去も「日本最後の空戦」まで起きた歴史ある場所

2025年7月16日、経営悪化により日産は、横須賀市にある追浜工場と、子会社の日産車体湘南工場の双方で車両生産を終了すると発表しました。神奈川県は日産の創業の地。追浜工場の前身は歴史ある飛行場でした。

追浜工場の意外な歴史と取り巻く状況の変化

 その後、アメリカ軍が進駐してくると飛行場としての機能は停止します。しかし、その広大さを活かして、戦場で損傷したジープやトラックが運びこまれ、スクラップヤードに転用されるようになります。そして、1948年には日本政府から指定を受けた富士自動車(のちの小松ゼノア。SUBARUの前身である富士重工とは別)が占領軍自動車の修理や解体、再生事業を請け負いました。

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1983年に撮影された日産自動車追浜工場付近の空中写真(画像:国土地理院)。

 同社は乗用車事業への参入をもくろみ、1952年にクライスラーと提携を結んでプリムス車のノックダウン生産を開始しますが、大型乗用車の国産化に否定的だった当時の通商産業省(現・経済産業省)の妨害により、必要な外貨割当を受けられずに事業が頓挫。ノックダウン生産は中止を余儀なくされました。

 朝鮮戦争が終わり、1950年代中頃を過ぎるとアメリカ軍の車両修理依頼が激減したため、富士自動車はやむなく人員削減を発表しますが、これに不満をもった労働者らが大規模な労働争議を起こします。その結果、同社追浜工場はいったん閉鎖されるも、これを日産自動車が入手。「日産の追浜工場」として姿を変え、現在に至っています。

 追浜工場は専用埠頭を持つことから、遠隔地や海外向けの完成車については、内陸の栃木工場で生産された車体についても追浜までキャリアカーで運ばれて来て、ここから船積みされていました。しかし、2010年に佐野田沼IC~岩舟JCT間の開通により北関東自動車道と東北自動車道と接続すると、輸出港である茨城港へのアクセスが大幅に改善されました。

 その結果、東京湾の奥にある追浜工場からの輸出量が大きく減り、それに伴って日産社内における追浜工場の重要性も低下しています。加えて、追浜工場自体の施設の老朽化に加え、日産が業績悪化に陥ったのですから、同工場が近い将来、閉鎖されるのもやむを得ないことなのかもしれません。

 とはいえ、地元である神奈川県、そして横須賀市などにとっては地域経済や雇用、税収などへの影響が大きいため、反発は必至です。いずれにしても、日産の国内主力工場のひとつとして歴史を持つ追浜工場が新業態へと転換するのか、はたまた閉鎖されるのか、いずれにせよ日産ファンや地元住民に対して与えるインパクトは大きく、動揺は隠せないでしょう。

【B-29じゃない!?】終戦後に勃発「第二次大戦最後の空戦」で横須賀に飛来した米軍の4発爆撃機(写真)

Writer:

「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に

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