街路樹の外側も“車道”…なぜ? 運転ちょいムズ 独特構造のデカい道「三線道路」とは?
道路の中央分離帯ではなく、同じ方向の車線を隔てるように並木などの緑地帯が存在する広い道路があります。車線変更しにくい構造でもあるこうした道路、実は台湾でもよく見られるものです。
やっぱり車線変更は難しい!
台湾の「三線道路」は現在でも多くの都市で現役ですが、筆者が台湾の各都市をレンタカーで運転する場合、「三線道路」の運転はかなり難しいとも感じます。
同方向の車線間に分離帯が存在することで、車線変更のハードルがグッと上がること。そして特に、台湾は右側走行のため、車線の端にあたる右折車線には無数のバイクが走っており、この車線変更には相応の慣れと注意が求められます。
しかし、「三線道路」開拓時を想像すると現在ほどの激しいクルマの往来はなく、そして台湾の近代化・道路美化を目指す強い意志のもとで整備に至ったようにも思います。
台湾の三線道路の多くは、交通量の増加とともに、街路樹で仕切られた緑地や歩道部分は車道に転用されていきました。一方、大阪の御堂筋では現在、交通量の減少にともなって一部の側道部分を歩道化する整備が行われています。将来的には全面歩道化する計画です。
Writer: 松田義人(ライター・編集者)
1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。
興味深く拝読いたしました。
「三線道路」は道路構造的には、Boulevard構造と呼ばれ呼ばれています。道路中心側の車線は幹線用として主に通過交通のために、路側側の車線は地域へのアクセス交通のためを意図して設計されています。19世紀にフランスなどヨーロッパを中心に設計され、パリのシャンゼリゼー通りなど都市の顔としての役割を果たしています。20世紀初頭にはアメリカや世界各国で多く設計され、アメリカの高速道路のランプ名に見る***** Bvd. などの表示はその略号となっています。御堂筋や台湾での「三線道路」もこうした流れの中で建設されたものと思われます。1980年代以降右左折交通の安全性の問題から廃止される事例も増えました。札幌にも嘗ては北1条通り西5丁目から西15丁目付近までBoulevard構造がありましたが地下駐車場建設に伴い前世紀末に廃止されています。
Boulevard構造はその景観性や都市としてのメッセージ性から近年その再評価が行われてきています。あるいは、従道路を自転車専用道とした幾何構造も多く見られるようになってきています。また、タイ国内のアジアハイウェイでは、バンコクからチェンマイへの国道1号や、ラオスへ結ぶ国道2号などでは、幹線道路とフロンテージ道路のしての特徴をさらに明確にした幾何設計を行うことによって、高規格幹線道路ネットワークを実現しています。我が国では地方部の高規格道路として、ドイツのアウトバーンでは絶対にあり得ない片側1車線の高速道路の建設が広く行われていますが、その貧弱な機能と景観性から”走っていて全く楽しくない道路”の典型となっています。北海道のように広い大地の野面を”楽しく走る道路”としてBoulevard 構造はうってつけではと個人的には思っていますが、その良さが理解されていないのは残念です。
Boulevard 構造の沿革や設計法をまとめた「The Boulevard Book: History, Evolution, Design of Multiway Boulevards」(Allan B. Jacobs, MIT Press, 2002)が出版されています。
情報がお役に立てば幸いです。