軽トラのイメージ強すぎた!?「大阪の自動車屋」が気合い入れて作った “オシャレ車”の不遇
ダイハツというと小型車、とくに軽自動車や軽トラックのメーカーというイメージが強いのではないでしょうか。一方で、洗練されたクルマを生み出す企業でもあります。市場のニーズと齟齬が生まれた結果、不振にあえいだ車種がありました。
ダイハツの優れた企画力やデザイン力を体現した「シャレード」
1983年に2代目へモデルチェンジすると、一転してシャープなウエッジシェイプデザインが特徴のイタリアンルックに変身。デ・トマソとの共同開発によるホットハッチの「シャレード・デ・トマソ」や、世界ラリー選手権(WRC)のホモロゲーション取得のための「926ターボ」なども販売されました。

そして、1987年に誕生したのが3代目「シャレード」です。このモデルはダイハツが主戦場としていた地方のみならず、都市部や輸出市場の獲得を目指し、車体を若干大型化した上で、Cd値0.32というエアロダイナミクスボディを与えました。このクルマを担当したのは、社内デザイナーの青木宏氏と上田英之氏で、曲面を多用しリアを絞り込んだ、例えるならフランス車を思わせるエモーショナルなスタイリングになりました。
デビューとともに3代目「シャレード」のスタイリングは専門家や評論家から絶賛され、ダイハツの販売網が脆弱であったヨーロッパ市場でも一定の評価を得たようです。ところが、肝心の日本市場では販売が伸び悩みます。理由のひとつに車格が向上したことによる値上げがありました。しかし、それ以上に苦戦の原因となったのが、その「美しすぎるスタイリング」だったのです。
3代目「シャレード」はコンパクトカーながら安定感と上質感があり、現在の目で見ても精錬された美しいクルマです。のちにルノーはこのクルマのスタイリングを模倣して、初代「クリオ」(日本名「ルーテシア」)をデビューさせたほど。そのことからも、3代目「シャレード」の完成度が高かったことがわかるでしょう。
しかし、ダイハツ車のメインユーザーは、冒頭で記したダイハツ幹部社員の言葉を借りれば、ごくフツーの「田舎のおっちゃんやおばちゃん」です。目新しい、外車のようなデザインはかえって落ち着かず、むしろ見慣れた日本車然としたルックスの方が安心します。
地方は、日本家屋が多く、田畑や山林が広がっています。誤解を恐れずに言えば、「ムラ社会」である日本の田舎でヘタに目立つのは、近所づきあいなどを鑑みるとできれば避けたいでしょう。「出る杭は打たれる」の言葉どおり、田舎で洗練されたものや美しいものを身に付けていると、「スカしている」だの「気取り屋」だのと陰口を叩かれた挙句、気がつけば村八分ということにもなりかねません。
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