軽トラのイメージ強すぎた!?「大阪の自動車屋」が気合い入れて作った “オシャレ車”の不遇
ダイハツというと小型車、とくに軽自動車や軽トラックのメーカーというイメージが強いのではないでしょうか。一方で、洗練されたクルマを生み出す企業でもあります。市場のニーズと齟齬が生まれた結果、不振にあえいだ車種がありました。
地方では斬新すぎ、都市部では企業イメージが邪魔に
その一方で、こうした美しさや洗練を好むユーザー、とくにバブル期から増え始めた横文字系の職業の人々は都市部に多くいます。しかし、ダイハツはこうした地域では販売網が弱いうえ、彼らはクルマとしてのデザインや中身よりも、ブランドをありがたがる傾向があります。3代目「シャレード」がイタリアやフランスのメーカー、あるいは国産メーカーでもホンダあたりから発売されていれば、彼らはこぞって購入したかもしれません。

ダイハツというと、軽自動車、とりわけ軽トラックや軽商用車の販売台数が多いため、その企業イメージゆえに、どうしても外車や国産高級車を乗り回すユーザーには最初から引っかからなかったのです。
地方と都市部、いずれのユーザーにも受け入れられなかった3代目「シャレード」は、1993年にモデルチェンジ。4代目ではデザイン性を抑える方向へとシフトしました。
しかし、ダイハツのデザイナーのクリエイティビティにブレーキをかけることはできなかったのか、1998年に登場した実質的な後継者の「ストーリア」では、他にない個性とユニークなスタイリングで勝負を仕掛ける方向へ舵を切りました。
ただ、結果は販売力の差からトヨタにOEM供給された「デュエット」の方が売れたのです。結果、2001年のマイナーチェンジではトヨタの要望を受け入れる形で、フロントマスクを一新してしまいました。
おそらく、日本の大衆の好みを知り尽くしているトヨタならばこのような失敗は犯さなかったでしょう。彼らは一流のセンスと実力を持ちながら、商売のために、敢えて先鋭的なプロポーションにせず、「キープコンセプト」なデザインへと自ら抑制する術を弁えているのですから。
ブランド力と企画力、そしてデザイン力のミスマッチ。そのことが今も昔もダイハツの課題なのかもしれません。しかし、玄人を「おっ!」と言わせるクルマ作りこそがダイハツの魅力でもあると、最後にフォローの意味も込めて記しておきましょう。
Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)
「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に
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