自衛隊の次世代戦闘機「GCAP」ライバル機より一歩リード?→日本の立場は 「実証機先に作れそうです」が意味するもの

日本が開発に参画する次期戦闘機「GCAP」は、フランスなどが開発を進めている「FCAS」と比較すると、開発状況はリードしているように見えます。日本はこの状況をどのように考えるべきでしょうか。

日本に「GCAP開発一歩リード」どう影響?

 一方、GCAPはイギリスで技術立証機の製造が進んでいます。

 製造を行うイギリス拠点の大手防衛企業、BAEシステムズは2024年8月に製造へ入ったことを公表し、2025年7月には、構造物重量に換算すると3分の2の製造が進行中と発表しています。イギリスの技術立証機は、エンジンこそタイフーンと同じ「EJ200(推力約6200kg)」を用いるため、本来GCAPが想定する推力より低いものの、ミサイルなどを格納する兵器倉も備えています。つまり、英国の技術立証機はGCAPで使う技術の有効性を実際に飛んで確認できるのです。

 これを見れば、GCAPはFCASより進んでいると思われます。ただし、ここで日本が注意しなければならないのは、イギリスの技術立証機は同国の資金で賄われ、さらに製造も同国で進められていることです。

 GCAPに向けた技術立証機の製造をイギリスが発表したのは2022年7月。GCAPの共同開発が公表される5か月前でした。このため技術立証機の製作はイギリス国内で進められるのは当然で、さらに得た成果がGCAPに反映されるのも当たり前のことです。そして、これも当然なのは、どの国も開発と生産に関して拠出した費用を“回収”し、生産時の雇用を自国内で確保したがります。そのため、イギリスは技術立証機の成功如何では、GCAPの開発において大きな優位性を持ち、発言力を強めるでしょう。

 この状況を日本はどう受け止めればよいのでしょうか。GCAPもFCASも完成後は国際的な輸出を視野に入れています。先に完成させた方が海外セールスも先んじることができ、輸出国が増えれば生産数も増え、かかった費用を“回収”できることになります。

 GCAPの全体の開発がFCASより進んでいるのは日本にとっては安心できる反面、イギリスの技術立証機の成果如何では、GCAP内での“立場”にやきもきする場面が出てこないとも限りません。日本はイギリス・イタリアとともにFCASチームに負けず開発をけん引しつつ、さらにGCAPチーム内での立ち位置を確保し続ける難しい運営に挑み続けなければならないのです。そのためにも日本は、FCASの動向を監視し、何が遅れの、或いは進展の背景になっているか探りつつ参考にしていくことが欠かせないでしょう。

【画像】これが空自も導入予定「次期戦闘機」最新イメージです

Writer:

さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。

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