英史上最大の空母「なぜ艦橋が2つあるの?」乗ってわかった多数のメリット! 普段使わない小部屋まで

東京国際クルーズターミナルに寄港したイギリス最新の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」にこのたび乗船取材してきました。乗ってみたら、「ECP」なる普段は立ち入れない部屋にも入ることができました。

分割式艦橋のあいだに何がある?

 また、艦全体を見渡せる航空管制室というシチュエーションを生かし、乗組員は飛行甲板の説明も行っていました。

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2025年9月2日、離日のために東京国際クルーズターミナルを発つ空母「プリンス・オブ・ウェールズ」(深水千翔撮影)。

「飛行甲板の中央付近に引かれている、後部から前部、そしてランプの先端まで続く非常に太い黒い線が滑走路だ。全長約900フィート(約274m)で、通常、離陸するのは350フィート(約107m)地点。この空母をユニークにしている要素のひとつが艦首部に設けられたランプ(スキージャンプ)だろう。ランプを備えた空母は世界に数隻しか存在しない。これがあることで、わずかながら追加の軌道が得られ、通常より短い滑走距離で、かつ通常より多くの装備を搭載した状態でF-35Bを離陸させられる」

 また、クイーン・エリザベス級ではアイランドを分けたことで右舷中央部にも昇降機(リフト)を置けるようになり、飛行甲板の面積を広げることができました。発艦時に前部リフトを上昇状態で固定する必要がなくなったため、格納庫と飛行甲板の間で機体や物資を2つのリフトを使って効率的に運べるようになっています。

「『プリンス・オブ・ウェールズ』はヘリコプターとジェット機を同時に発着させられるのも特徴のひとつだ。本艦の左舷側にはF-35B戦闘機の着艦場所となる5つのスポットがあるほか、右舷側には6つ目のスポットとその周辺にヘリコプター用の追加スポットも設けられている。つまり、左舷側でジェット機を運用しつつ、右舷側では常にヘリコプターの運用が可能である」

 見学を通じて、クイーン・エリザベス級はイギリスから遠く離れた地域への迅速な戦力展開と、現代戦で必須なF-35Bとヘリコプター両方の効率的な運用、そして艦の生存を重視していることがわかりました。

 冗長性を確保するため、艦橋と煙突の機能を持つアイランドを2つ置き、飛行甲板を広げるとともに、前部と後部のいずれかが攻撃を受けても航行が継続できるシステムを作るという考え方は、限られたスペースでミッションを行う必要がある空母では合理的なのかもしれません。

【写真】デッカイ窓! これがイギリス空母の艦橋内部です

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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