「高くても」国産EVバス、京王が大量導入へ 中国製から“路線転換” バス会社の本音を聞いた

京王バスが路線バス車両に国産初の大型電気自動車(EV)バスを大量導入します。現在は中国製の大型EVバスを抱えていますが、国産に切り替えるのには納得の理由がありました。

完成度はスゴイ、でも「高い」国産

 一方、京王バスが2025年度に導入を始める「エルガEV」は、いすゞと日野が折半出資するバス製造会社、ジェイ・バスの宇都宮工場(宇都宮市)で24年11月に量産が始まりました。日本で21年1月に納車を始めた「K8」に比べて後発ですが、京王バスを含めて多くの国内バス会社が積極的に発注しているのは納得できる理由があります。

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京王電鉄バスに所属する日野自動車の大型ハイブリッドバス「ブルーリボンハイブリッド」(大塚圭一郎撮影)

「エルガEV」で手始めに売り出された都市型モデル(ZAC-LV828L1)は全長が10.54m、全幅2.485m、全高3.33mで「K8」とほぼ同じ。同じくチャデモに対応し、充電1回当たりの航続距離は360kmと、「K8」の実に1.5倍に達します。

 もっとも、航続距離については既にEVバスを導入しているバス会社幹部が筆者に「実際の運行時の航続距離は各社ともメーカーの公称よりはるかに短く、公称は全く当てにならない」と断言しました。その要因とは「メーカーの公称は同じ速度で巡航した場合の数値なのに対し、路線バスは停留所に止まったり、信号待ちをしたり、渋滞で待ったりしながら運行するうえ、EVバスは季節によって変動がかなりあるためだ」とか。

「エルガEV」で目を見張るのが、車いすやベビーカーの利用者、お年寄りにも乗降しやすく、車内でも移動しやすいバリアフリーの設計です。リアアクスル(後車軸)の左右にそれぞれモーターを内蔵することで、乗り降りしやすい低床化を実現。

 さらに、最前部の乗降口から最後部の座席まで段差がなく、いずれの座席もそのまま着席できます。バッテリーを屋根上と車体後部の床下に配置したことで実現できた設計で、段差がないため利用者が安全に移動できるのは大きな利点です。

「K8」の場合、後ろ半分の座席に腰掛けるにはいずれも段差を上がる必要があります。筆者が見学した京王バスの車両は、乗客が気づかずに転倒することを防ぐため、段差の部分に黄色い線で縁取りするとともに、段差注意のシールを貼り付けて注意を呼びかけていました。

 ただし、「エルガEV」の都市型モデルの希望小売価格は5980万1800円(消費税込み6578万1980円)と、「K8」が日本で販売を始めた当初の価格の3850万円(税別)を大きく上回ります。

【え、こんなん付いてるの!?】京王の中国製EV大型バスの“神装備”とは(写真)

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