旅客機の窓なぜ「四角」ダメ!? 発端は相次いだ“悲劇” イギリスが執念で見つけた事故原因がキッカケ

ジェット旅客機の窓は、おしなべて丸くなっています。とはいえ、世界初のジェット旅客機では四角い窓でした。ただ、その時代に連続墜落事故が起きたことで丸くなっています。いったい、何が原因だったのでしょうか。

透明部分もしっかり進化! 最新型は「より大きな窓」へ

 円形や楕円形の窓は角がないため、四角い窓の角に発生していたような力の集中が起こりにくく、応力を窓の周囲へなだらかに分散させることができます。

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ボーイング777のコックピットと客室の窓(画像:写真AC)

 加えて、窓の周りには荷重を分担する骨格部材も組み合わされ、形状と構造の両面で弱点を作らない設計が確立されました。

 一方、透明な窓ガラス(正確には樹脂)についても、現代は強度に優れた延伸アクリル製のパネルを3枚重ねた多層構造が主流です。

 通常は外側のパネルが与圧を受け持ちますが、万が一損傷しても中間パネルがその役割を担えるようになっています。そのため、パネル間の圧力を調整する小さな通気孔が開けられるなど、何重もの安全対策が施されています。

 また、設計思想そのものも大きく変わりました。かつては「運用期間中は絶対に壊れない」という前提で造られていましたが、コメットの事故以降は「亀裂はいつか必ず発生する」という前提に立ち、点検で発見しやすく、致命傷になりにくい構造にする「ダメージトレランス」という考え方が標準となりました。

 この思想と、金属疲労に極めて強いCFRP(炭素繊維複合材)のような新素材の登場が、現代の航空機を支えています。

 その結果、ボーイング787では安全性を損なうことなく、乗客が広い景色を楽しめる大きな窓の採用が可能になり、過去の教訓が現代の快適性向上にもつながりました。

 ちなみに、客室の窓が丸い一方でコックピットの窓が角ばっていることが多いのは、機首が客室とは異なる複雑な構造で強固に補強され、窓自体も鳥の衝突などに耐える特殊な合わせガラスで作られているためです。

 私たちが目にする丸い窓は、単なるデザインではなく、過去の悲劇から学び、安全性を追求し続けてきたエンジニアリングの歴史そのものを物語っていると言えるでしょう。

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