やる気満々!?「戦艦トランプ」は一体どんなフネになるのか 「砲弾は安い」「アルミじゃ溶ける」発言から見えるその姿
アメリカのトランプ大統領が、アメリカ海軍への「戦艦」復活は有力な選択肢の一つだと述べました。かつてのアイオワ級の再就役ではなく、全く新しい軍艦の建造を示唆していますが、まったく不合理というわけでもないようです。
過去の戦績を踏まえた? 「新戦艦」の姿とは
ではトランプ大統領の言う戦艦とは、いったいどのようなフネなのでしょうか。前に述べたトランプ大統領の発言の中に、予想するためのヒントが隠されています。
トランプ大統領は復活させる戦艦について「側面装甲が6インチ(約15.2cm)の鋼鉄製だ」と述べています。この構想には、ある程度の合理性があると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
現在の軍艦の船体はアルミニウム合金や複合材料が多用されていますが、トランプ大統領は「アルミニウムはミサイルが近づくだけで溶けてしまう」と述べています。さすがにそれはオーバーな表現だとは思うものの、アルミニウム合金を船体に多用し、第二次世界大戦時に建造された軍艦に比べれば装甲の薄いアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「コール」は、2000年にアデン湾でアルカイダの小型爆弾の攻撃を受け、多数の死傷者が生じ、修理完了まで14か月間の時間と大きなコストを要しました。
このことなどを考えると、内蔵されている炸薬(火薬)の量が多くはない小型爆弾やミサイルの攻撃を受けても、簡単には損害が生じない軍艦が欲しいという発想でしょう。
またトランプ大統領は「砲弾はミサイルに比べて安い」とも述べています。
陸戦と海戦は一概に比較できるものではないのですが、ウクライナ戦争はウクライナ、ロシアとも多数のミサイルを消費しており、生産にも時間がかかるミサイルの在庫が尽きてしまうという事態に見舞われています。トランプ大統領の言う通り、砲弾はミサイルに比べて価格が安いだけでなく生産も容易なので、軍艦の砲を強化しようという発想にも一理あると思います。
湾岸戦争で現役復帰したアイオワ級戦艦は、搭載していたトマホーク巡航ミサイルやハープーン対艦ミサイルでイラク軍の通信施設などの重要拠点を攻撃して無力化し、そのうえで主砲の40.6cm砲で攻撃する戦法を採用していました。
トランプ大統領の言う戦艦も、自艦または僚艦に搭載されたミサイルによる攻撃で、敵艦や敵施設のレーダーを無力化してから、砲による攻撃で仕上げをするという使い方を志向しているのかもしれません。
最大の問題「作れるのか…?」
ただし、アメリカの造船産業は生産力の低下が著しく、またアメリカは第二次世界大戦直後に就役したウースター級軽巡洋艦(口径6インチ/約15.2cm砲を搭載)以降は、口径5インチ(約12.7cm)以上の艦載大口径砲を開発していません。新たな戦艦の開発は容易ではないと思います。
また、トランプ大統領は戦艦の復活について、「我々が検討していることだ」とも述べています。
「私が検討している」であれば、トランプ大統領個人、またはその周辺で検討されていることなのでしょうが、「我々」という表現を用いたあたりからして、アメリカ海軍の中でも、戦艦に類する軍艦の建造が検討されているということなのだと思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。





画像ギャラリー2枚目のキャプション『左が大和型、右がアイオワ級(アメリカ海軍の画像を加工)。』となっちるが、左右逆と思われますが、校正はしっかりやられているのでしょうか。御社記事の正確性が疑われます。2025年10月22日、16時38分投稿
5インチ砲以上は開発してない?待って。ズムウォルト級の主砲は確か155mmでは?(流石に1970年代に試験だけで終わった8インチ単装砲は含めないとしても)