35年越しの鉄道“再国有化”も「ふざけるな!」 劣悪サービス“ますます低下” 鉄道先進国「失敗の失敗ぶり」に国民怒り

イギリスの鉄道が迷走しています。1990年代の民営化が「失敗」だったとして、再国有化がスタート。これによりサービス向上や運賃値下げが期待されていましたが、ふたを開けると予想を裏切る展開に。「民営化」に続き「再国有化」も失敗だったと指摘が相次いでいます。

「再国有化」に舵を切った経緯

 英国が鉄道の再国有化に向けて舵を切ったのには、「民営化の大失敗」との受け止めがありました。

 1990年代の民営化では、線路などのインフラ管理と列車の運行を別会社が担う「上下分離方式」を採用しました。民間企業がインフラを所有せずに列車を運行できるため、コスト削減やサービス改善につながると期待されていました。

 ところが、運賃はインフレ率を超えての値上げが常態化し、ストライキも多く、サービスもまったく改善されませんでした。それどころか、インフラ管理会社と各運行会社の連絡不足などで遅延や運休、事故などが増え、また、同一線路を多数の運行会社が使用するため、1社の列車遅延が他社の運行に影響を及ぼすなどデメリットが目立つようになったのです。

 鉄道を再国有化すれば、こうした民営化のゆがみを是正できるというのが労働党の謳(うた)い文句でした。

 しかしその一方で、再国有化で本当にサービスが良くなるのかという指摘は、再国有化の計画段階からありました。

 例えば、労働党は順次、大手運行会社を国有化していく予定ですが、3番目には「グレーター・アングリア」という会社がリストアップされています。同社は三井物産が4割を出資しており、また、英国で最も高い定時率を誇っている優良企業です。

 問題が少ないとされるのになぜ、3番目という早期に国有化しなくてはならないのか、逆にサービス低下につながらないのかと不安視する意見が後を絶ちませんでしたが、同社は10月12日に国営化されました。

 最初に再国有化されたSWRは実際に、運転士の育成などを口実に減便したり、バスでの代替運行も多発したりしています。中には1時間に2本しかなかった電車が1本に減った地域・時間帯もあったようで(英紙フィナンシャル・タイムズによる)、再国有化によりサービスがますます低下したと利用者から総スカンを食っています。

 また、再国有化した鉄道全体を統括する「グレート・ブリティッシュ鉄道(GBR)」の設立も2023年予定から大幅に遅れ、いつ実現するかまだ見えていません。つまり司令塔がいつ稼働するのか分からないのです。

「民営化は失敗だった」と言って再国有化へ舵を切ったのに、それからたった3か月で早くも「再国有化は失敗だった」との指摘が相次いでいるとは皮肉な話ですが、スターマー首相は「国を変えるのはスイッチを押すような簡単なことではない。大変な努力、忍耐、そして決意が必要」と力説し、最近もBBCへのインタビューで「(国家の)改革には時間がかかる」と主張しています。

 次回の総選挙は2029年なので、まだまだ時間があるようにも思えますが、いらだつ英国民の堪忍袋の緒がそれまで持つのか。英国鉄道の迷走はまだまだ続きそうです。

【心機一転?】再国有化された鉄道の一番列車(写真)

Writer:

アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。

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