“心臓”を変えただけで!?「凡作」から「WW2最優秀」へ 高性能戦闘機が象徴した航空大国の意地

10月26日は「マスタング記念日」です。1940年の初飛行から85年、最初は低空番長だったフツーの戦闘機が、いかにして第二次世界大戦最高の戦闘機に化けたのか。その意外なロマンをひも解きます。

マーリン・エンジンと奇跡の合体

 このイギリス軍での「マスタングMk.I」の重用を見て、アメリカ軍も少しだけ独自改修した機体をP-51A「マスタング」として採用します。米英両軍とも高性能戦闘機の誕生を喜びましたが、実戦運用する中で不満も出てきました。特に問題になったのが、高々度飛行性能が不足している点です。低高度では極めて高速で航続距離にも優れているマスタングですが、高度4500mを超えるあたりでガクッと性能が低下するのです。

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イギリス軍向けにノースアメリカン社が開発した「マスタングMk.I」。アリソン製エンジンを搭載していた(画像:パブリックドメイン)。

 これは搭載していたアリソン製エンジンが、低~中高度に適した構成であったことが理由です。ノースアメリカンでは様々な改修や工夫で性能向上を図りますが、エンジンの問題であるため、根本的な解決にはなりません。またアリソン社もゼネラルモーターズ(GM)から枝分かれしたベンチャー部門のような会社であったため、新型エンジンを開発する余力もありませんでした。

 この解決に名乗りを上げたのが、イギリスのロールス・ロイス社です。1942(昭和17)年、アリソン製エンジンにサイズが似ているロールス・ロイス製「マーリン61/65」エンジンに換装した試作機の「マスタングMk.X」は、なんと高度9000mでP-51A「マスタング」を130km/hも上回る最高速度692km/hを達成。上昇性能も劇的に向上したのに加えて。実用上昇高度は1万2000mに到達したのです。

 エンジンを変えただけで、奇跡的な性能向上を果たした「マスタング」に、アメリカ軍は心底驚きながら、即座に大量生産を決定します。急増するエンジン需要には、当時ロールス・ロイスからライセンス権を得ていたパッカード社が全力で応じることになりました。

 さらに性能を引き出すためにプロペラも変更したうえで、遂に登場したのがP-51BおよびP-51Cです。これは組み立て工場の違いを示しただけで、ほぼ同じ機体です。イギリスも同じ機体を「マスタングMk.III」として採用しました。

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