“自衛隊パジェロ”ウクライナで好評も「困ってます」「無理して使ってます」 露呈した装備品輸出の“欠けた視点”
日本からウクライナへ送った「パジェロ」ベースの軍用車両が、現地で使われ好評のようです。ただ、現場では苦労している側面も。「売りっぱなし」の状態は、今後の装備品輸出では禁物かもしれません。
ウクライナで「ミリタリーパジェロ」どう使われている?
2025年5月にアジアプレスの映像ジャーナリストである玉本英子氏が発表した現地レポートは、1/2tトラックを運用しているウクライナ軍の将兵の評価を伝えています。
同軍が運用している三菱自動車製のピックアップトラック「L200」と比較すると、ドアが大きく車内に余裕があるためフル装備の兵員が乗降しやすく、また設計値(約440kg)以上に貨物を積載しても走行可能で、泥濘地でも支障が無いと述べており、その性能は概ね好評のようです。
ただ、そのウクライナ軍将兵は、現地語のマニュアルが無く、エアコンの操作方法や小銃取付け具の場所などは使いながら手探りで知ったとも述べています。
1/2tトラックは複雑な防衛装備品ではありませんから、ウクライナ語のマニュアルがないことはそれほど大きな問題ではないのかもしれません。しかし、ウクライナ軍の将兵は玉本氏に対して、修復用部品の入手は困難で、現場の兵士がネットで互換品を探したり、遠くの町の業者に頼んで修理してもらったりしてなんとか運用していることや、特に消耗が激しいタイヤの入手は難しくひび割れが入ったまま使い続けている、といった問題点も指摘しています。





今回の輸出は、長く使ってもらうよりも消耗品としての性格が強いから、及第点なんでしょう。
さて、73式小型トラックから1/2tトラックへの名称変更は平成12年(2000年)に各種器材の名称変更の通達が出ており、各種トラックを初め化学器材や需品器材の名称変更が示されています。
それによると「73式」はあくまでも仮名称だったようで、制式ではなかったようです。
制式装備品ではなかったのでジープからパジェロベースへと全く異なる車両になっても「73式小型トラック」の名称でも問題はないとされたのです。なお、(新)が付くのはあくまでも便宜上です。
「73式」の年式を冠する小型トラックは標準仕様車と警務隊仕様車のみであり、他の派生車はジープタイプも含め全て「1/2t~」いう名称だったのでこれらを統一するために名称変更をしたとされています。
つまり、ジープもパジェロベースも同様の1/2tトラックの名称です。
同様に73式中型トラック(派生車の救急車は1 1/2t救急車)、73式大型トラック(派生車のダンプは3 1/2t
ダンプ)、74式特大型トラック(派生車は74式の冠なし)も名称変更されたのです。
また、同じくしてトラック類の装備仕様変更が示されており、AT車が標準仕様でエアコンと情報収集用のカーラジオが標準装備されることになりました。実際には、パジェロベースの小型トラック(平成8年度納入車以降)、高機動車ベースの中型トラック(平成11年度納入車以降)、大型トラック(平成12年度納入車以降)から標準装備になっています。
高機動車は上記のトラック類ではないとされ、にエアコンが標準装備になったのは最近だというなんともお役所仕事です。