陸上部隊が「船乗り」に!?→「海自のやり方、全然ちげえ…」どう乗り越えた? 「自衛隊海上輸送群」発足まで

自衛隊による新たな共同組織「自衛隊海上輸送群」が発足。文化や風習の違うなか船を操船しなければいけない陸自と海自はどうやって歩み寄りを図ったのでしょうか。

敬礼ひとつでも動作が違った!

 筆者が実際に自衛官に聞いた話によると、たとえば敬礼ひとつ取っても違いがあったといいます。陸自と空自では肘を90度に曲げて敬礼するよう指導されますが、海自では45度に曲げます。これは狭い艦内でも動きやすいよう工夫された、旧日本海軍時代からの伝統です。

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小さく敬礼。海軍時代の伝統を守り続ける海自の気風(画像:海上自衛隊)

 また、信号ラッパも異なります。陸自と空自が「九〇式喇叭(らっぱ)」を使うのに対し、海自はひと回り大きな「二環巻喇叭」を使用します。さらに海自独自の「サイドパイプ(笛)」という通信手段もあり、陸自隊員たちはこれにも興味を示しました。

 数字の呼び方や用語にも違いがあります。陸自が「2」を「に」と読むのに対し、海自では「ふた」と呼びます。陸自でいう「予行演習」は、海自では「立付(たてつけ)」と呼ばれます。「ひとふたふたまる(12時20分)、立付開始!」という号令に、陸自隊員たちは最初こそ戸惑ったそうです。

 もちろん、苦労したのは陸自だけではありません。指導する海自の側にも課題がありました。普段は当たり前のように通じる言葉が伝わらなかったり、海の常識がまったく通用しない相手に一から教える難しさもあったといいます。「同じ船で寝起きを共にしても、最初はまるで外国軍と訓練しているようだった」と笑う海自隊員もいました。

 それでも、互いにプロの自衛官同士です。海外の軍隊との共同訓練なども経験してきた彼らは、少しずつ信頼を築き、絆を深めていきました。

 発足当日、輸送群の甲板には陸・海の区別なく並ぶ隊員たちの姿がありました。互いの文化を理解し、力を合わせ、新たな任務に挑む彼らの姿は、まさに統合自衛隊の新たな象徴でした。

「陸か海かじゃない。私たちは同じ『自衛官』なんだ」。陸の兵士が海に出て、初めて見つけた答えなのかもしれません。

【画像】え!? 几帳面すぎる…これが、陸上自衛隊の駐車場です

Writer:

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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