「大崎発のつくばエクスプレス」もあり得た!? 驚きの「地下鉄直通案」に「新交通システム案」 “秋葉原発”にやっと落ち着くまで
つくばエクスプレスの東京都心側のターミナルは秋葉原ですが、1970年代の構想段階では田端、上野など5案がありました。そこからどのような経緯で秋葉原に絞られていったのでしょうか。
課題山積だった「新金線案」
新金線は総武線新小岩と常磐線金町を接続する単線の貨物専用線です。新金線ルートは南流山から南下して松戸付近で常磐線に合流し、金町から複線化した新金線を経由して亀戸に到着。越中島貨物線に沿う形で南下し、深川扇橋(現・清澄白河~住吉間)から地下鉄11号線(半蔵門線)に乗り入れる案です。
北千住・秋葉原案は国鉄と茨城県、新金線案は主に千葉県が推していたようですが、千葉県案は我孫子を起点として千葉県-都心間に特化した計画だったようです。運輸新政策審議会で新金線案が比較対象となったのは、答申第7号が国鉄末期の貨物輸送縮小を反映した貨物線の旅客化がテーマだったことが影響していると考えられます。
11号線は1972(昭和47)年の都市交通審議会答申第15号で、終点を蛎殻町(現・水天宮前)から深川扇橋(実際には駅は設けられなかった)に延長しましたが、答申第7号では深川扇橋から北へカーブして押上・四つ木を経て松戸までさらに延長されます。
新金線案は11号線と常磐新線を一体化する発想です。つまり審議の過程で、松戸駅の混雑対策として常磐新線を松戸経由にするか、地下鉄を延伸するかの議論があったことを意味します。
しかし国鉄は新金線案に否定的で、前掲記事は常磐線の混雑緩和とならないこと、総武線の混雑を悪化させること、新金線の高架化が必要なこと、11号線内に折り返し能力が必要なことなど、様々な課題を指摘しています。
結局、常磐新線は北千住・秋葉原案、11号線は松戸延伸という自然な形に落ち着きますが、その後も常磐新線と11号線の直通は蒸し返されたようです。1990(平成2)年1月30日の朝日新聞は、用地買収の縮小で建設費を約半額にできるとして、運輸省が常磐新線を松戸から11号線に直通させる案を非公式に提示したと報じています。
しかし東京都と埼玉県の強い反発で運輸省案は沙汰止みとなり、同年11月に沿線自治体が第3セクター設立に合意したことで、ルート問題は完全決着しました。
そして現在、つくばエクスプレスは、東京都が計画する「都心部・臨海地域地下鉄」と一体的する形で東京駅に延伸する構想があります。ターミナルが秋葉原から移る日は来るのか、今後の動きに注目です。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx





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