なぜP-38だけが「傑作機」になれた? 双発戦闘機が苦戦した時代の唯一の成功作 日本軍が「ペロ8」と呼んで油断した“双尾の悪魔”

第2次大戦中、各国で造られたものの性能的にはパッとしなかった「双発戦闘機」。その中で唯一、単発機と互角以上に渡り合ったのが米軍のP-38「ライトニング」です。なぜ同機は傑作機へと昇華できたのか、優れたメカニズムを紐解きます。

山本五十六司令長官の乗機を撃墜したことでも有名

 ほぼ同時期、ドイツではBf-110、日本では二式複座戦闘機「屠龍」などの双発戦闘機が開発されましたが、これらは速度や機動性の面で単発戦闘機にかないませんでした。

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P-38「ライトニング」戦闘機に乗ったアメリカ全軍トップエースのリチャード・アイラ“ディック”ボング。最終階級は少佐(画像:アメリカ空軍)。

 ところがP-38は、機体が大きいので格闘戦(ドッグファイト)こそ不得手でしたが、高速性に優れていたため、一撃離脱(ヒット・アンド・アウェー)を多用する機動戦に持ち込めば、単発戦闘機とも互角以上に戦えたのです。加えて、双発なので損傷に強く、エンジン1基が停止したり大損傷を被ったりしても、生還できる可能性が高かったといいます。

 ちなみに、太平洋戦争初期の日本のベテラン戦闘機乗りたちは、P-38が「ペロッと食える(撃墜できる)」ので「ペロ8」とか、その独特の平面シルエットから「目刺し」と呼んでいました。というのも、格闘戦がお家芸の日本軍パイロットに対して、アメリカ軍パイロットたちがP-38の長所を活かした既述の戦法を会得するまでの間、格闘戦に誘い込まれて容易に撃墜されることが多かったからです。

 なお「ペロ8」の通称には、別の由来もあります。P38という文字をピストの黒板に記すと「3」の数字が「ろ」のように見え、そこから「Pろ8=ぺろはち」と読めたからともいわれます。

 一方、ドイツ空軍は早くからP-38を高く評価しており、北アフリカ戦線の同軍は、本機を「Der Gabelschwanz Teufel(デア・ゲーベルシュヴァンツ・トイフェル、双尾の悪魔)」と呼んでいました。

 ちなみに、第2次大戦におけるアメリカ第1位で40機撃墜のエース・パイロットであるリチャード・ボング、同じく第2位で38機撃墜のトーマス・マクガイアの乗機がともにP-38だったことが、本機の優秀性を物語ります。また、長距離飛行性能を活かして山本五十六連合艦隊司令長官が乗る一式陸上攻撃機を撃墜したのもP-38でした。

 今日のジェット戦闘機では双発が当たり前ですが、単発戦闘機が幅を利かせていた第2次大戦において、それに勝るとも劣らぬ活躍を示した双発戦闘機P-38は、傑作と呼ぶに相応しい機体と言えるでしょう。

【写真】え、操縦はハンドル!? これがP-38のコクピットです

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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