「有人戦車+無人兵器」を80年以上前にやっていた!? “最強戦車”の知られざる「早すぎた挑戦」 写真だけはやたら残っているワケ

21世紀の戦場で使われる無人機のルーツをたどると、第二次世界大戦に行き着きます。連合軍から恐れられたドイツ軍の重戦車「ティーガーII」が、無人兵器を扱う専門部隊に最初に配備されていたのです。どのような経緯だったのでしょうか。

「ティーガーII+無線車」の連携を進めたが…

 1944年1月、陸軍兵器局は最初期生産のティーガーIIを第316中隊に配備する決定を下します。理由は明確でした。無線操縦車を運用する専門部隊であることと、すでに重戦車を扱った実績があること。「重戦車+無人車」という新しい戦い方への期待でした。

 計画では14両が配備される予定でしたが、実際に届いたのは5両でした。中隊本部に1両、第1小隊に4両。他第2、3小隊にはIII号突撃砲が5両ずつ配備され、無線操縦車Borgward B IVが計36両で編成されました。

 1944年6月、連合軍はノルマンディーに上陸します。装甲教導師団も迎撃のため前線へ投入されました。しかし第316中隊のティーガーIIは、初期生産車ゆえの機械的トラブルが続出します。

 結局ティーガーIIの「初陣」は第503重戦車大隊に譲られ、第316中隊の車両は戦場に遺棄されたものもありました。それらは連合軍の興味を引くのに十分で、恰好の被写体になりました。

 第316中隊のティーガーIIは受領してからも駆動系にトラブルが多発し、訓練よりも修理している時間の方が長いような有様でした。実戦投入が決定すると中隊は充分な支援体制を要求し、牽引用に13両もの18tハーフトラックが配備されました。しかし、ほとんど実戦では活躍できず、戦場遺棄された車両も戦闘のよる破損ではなく操縦ミスでスタックして回収不能になったようで、期待の重戦車も先行きを不安にさせる結果となりました。

 この時撮影されたアメリカ軍の写真を見ると、無線操縦車を指揮するためのアンテナ類が確認できません。第316中隊のティーガーIIは、本来期待されたような重戦車+無人車の戦法には使われなかったと考えられています。戦局があまりに切迫していたため、貴重な重戦車は無人車誘導指揮車兼護衛戦車という特殊用途ではなく、単なる「普通の戦車」として使われてしまったのです。

 ティーガーII+無人車の連携は実際にはありませんでしたが、有人戦闘車両と無人兵器を組み合わせる発想そのものは、確かに存在していました。これは、現代でいう「有人・無人アセットのチーミング」の原型ともいえます。近年公開されたアメリカ軍の次世代戦車構想、M1E3も無人機とペアリングし、協同することを前提に設計されています。

 ティーガーIIは、ドイツ最後の重戦車として、悲劇的な最期とともに語られることが多い戦車です。しかし、その最初の配属先が無人兵器を扱う専門部隊だったという事実は、あまり知られていません。「早すぎた挑戦」は21世紀になって実現し、再び「キングタイガー」のように戦場の様相に大きな影響を与えています。

【元祖“無人機!?”】これが当時ドイツ軍の無線操縦車です(写真)

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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