空軍へのライバル心で誕生! 米海軍の「4発ジェット爆撃飛行艇」 “身内”に葬られた「異形機」の末路
冷戦初期、アメリカ海軍が開発した異形の「4発ジェット爆撃飛行艇」。新設された空軍への強烈な対抗心と、核攻撃能力への執念が生み出した水上の怪物です。しかし、その運命は皮肉にも海軍自身の“技術進歩”によって絶たれました。
技術の進歩が早すぎて「身内」にトドメ刺されることに
そこでアメリカ海軍は1952年、低空域で最大速度マッハ0.9程度を発揮し、航続距離約2400kmで、約14tの爆弾を搭載可能な4発ジェット爆撃飛行艇の仕様を各航空メーカーに交付。これに対してマーチン社が提示したモデル275をXP6M-1「シーマスター」として採用しました。
本機は、多くの飛行艇と同様に胴体が主フロートを兼ねていましたが、興味深いのは、支柱などを介さず主翼端に直接補助フロートが取り付けられており、その内部が燃料タンクになっていた点です。
試作型であるXP6M-1の初飛行は1955年7月14日でしたが、ジェットエンジンの取り付け角度が不適切だったり、滑水時にポーポイジング(上下動、縦揺れ)を起こしやすかったりと、さまざまな問題が判明したことから修正が施されます。しかし試作1号機が1955年12月17日に、また、同2号機も1956年11月9日に墜落し、2機が造られたXP6M-1は、ともに失われてしまいました。
続いて増加試作型のYP6M-1が6機造られ、すぐに量産型のP6M-2が24機発注されました。しかし、航空機の急速な発展と進化はこの5年のあいだにさまざまな問題を解決するほど著しいものでした。
この間、核爆弾の製造技術とジェット機の設計技術は大きく進歩しており、前者の小型化や、既存の空母でも運用が可能で、しかもペイロードが大きく航続距離も長いA-3「スカイウォーリアー」のような艦上攻撃機まで形になっていたのです。
また、「ユナイテッド・ステーツ」よりは小型ではあるものの、ジェット艦上機の運用に適したフォレスタル級の建造も決まりました。加えて潜水艦に搭載し、水中から発射可能な核ミサイル「ポラリス」を搭載した原子力ミサイル潜水艦まで誕生。こうしたことから、1959年8月に「シーマスター」の取得・運用計画は中止され、結局、本機の量産型は3機が飛行しましたが、5機は完成したものの飛行せず、残りの16機は造られませんでした。
アメリカ海軍が欲した、世界でも稀な「ジェットエンジン搭載爆撃飛行艇」という航空機を葬ったのは、核爆弾並びに飛行機(艦上機)、空母の急速な進歩と、ほかでもないアメリカ海軍の潜水艦と水中発射型弾道ミサイルであったといえるのかもしれません。
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。





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