新幹線はなぜ24時までなのか? 夜の6時間を使った「幻の計画」と、50年以上変わらない「基準」
2026年3月のダイヤ改正で、東海道新幹線には「6時」「24時」のギリギリを攻めるような列車が設定されますが、なぜ新幹線の運行は原則として朝6時から夜24時までなのでしょうか。背景には幻の計画や国の基準がありました。
「門限」を決定付けた社会問題
その要因の一つが騒音・振動問題です。建設時から不安の声はありましたが、列車本数が増えると都市部では日常生活もままならないほどの「騒音・振動公害」が発生し、新幹線の運行差し止めを求める訴訟が起こされるほどの社会問題となりました。
公害・環境問題への関心の高まりを受けて1971(昭和46)年に環境庁が発足すると、1975(昭和50)年7月に公害対策基本法の騒音規制のうち新幹線鉄道騒音に係る基準を定めた「環境庁告示第46号」を告示。これは1993(平成5)年、2000(平成12)年の改正を経て、現在も適用されています。
告示第46号の環境基準は、「I 主として住居の用に供される地域」が70デシベル以下、「II 商工業の用に供される地域等、I以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域」が75デシベル以下を基準値としています。
測定は「新幹線鉄道の上り及び下りの列車を合わせて、原則として連続して通過する20本の列車について、当該通過列車ごとの騒音のピークレベルを読み取って行う」「当該地域の新幹線鉄道騒音を代表すると認められる地点のほか新幹線鉄道騒音が問題となる地点を選定する」「測定時期は、特殊な気象条件にある時期及び列車速度が通常時より低いと認められる時期を避けて選定する」など厳格な条件が付されています。
新幹線はこの環境基準を満たさなければ走行が認められません。鉄道は運転速度が上がるほど騒音は大きくなりますが、基準値は1975年の制定から変化していないので、線路・車両の防音対策を施すことで対応しています。
そして重要なのは、この基準は「午前6時から午後12時までの間の新幹線鉄道騒音に適用するものとする」と定められていることです。言うまでもありませんが、夜中の24~6時は無規制なのでどんな音も出し放題、という意味ではありません。24時以降は運転を前提とした基準が存在しないのです。
6~24時としたのは、新幹線がすでにその範囲内で運行していたからです。もし貨物新幹線や夜行新幹線が実現していたら、24~6時の基準も制定されたかもしれませんが、国鉄、JRともその必要がなかったので運転時間の拡大を目指さなかったのです。
ちなみに「新幹線」を名乗りながら唯一、6時前に出発する列車が、山形新幹線の新庄駅5時40分発「つばさ122号」です。山形新幹線は法令上、東北新幹線東京~福島間と奥羽本線(在来線)福島~新庄間の直通運転なので、奥羽本線内は新幹線の騒音基準が適用されないのです。
ただし新幹線も24時以降の運転が全く認められないわけではありません。事故や災害による輸送障害や深夜の試運転、また2002(平成14)年の日韓ワールドカップでは東海道新幹線、上越新幹線で深夜運転を実施した事例があります。これらはやむを得ない事情または事前に周知・承諾を得た上で行われるもので、上記基準の範囲外となります。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx





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