墜落した「半世紀前のアメリカの攻撃機」A-10 イラン攻撃に駆り出された、もっともなワケ 高まる“再評価”

アメリカ空軍が完全退役させる方針だったA-10「サンダーボルトII」攻撃機が、イランで新たな活躍を見せています。「再評価」の傾向が日に日に高まっているのは、なぜでしょうか。

一度は“お役御免”寸前だったA-10

 A-10は湾岸戦争やアフガニスタン戦争、ISIL(イスラム国)との戦いなどで活躍し、存在意義を示し続けてきました。ただ、湾岸戦争では既にイラクの防空網がある程度無力化された状態でしたし、アフガニスタンやISILなどは、そもそも相手に防空網らしい防空網は存在していませんでした。

 このためアメリカ空軍は、このような相手との戦いではA-10は有効なものの、中国やロシアなどとの正規戦では使いどころがないと考えていたようです。アメリカ空軍は正規戦の脅威が顕在化した2010年代半ばから、たびたびA-10の退役許可を、アメリカ連邦議会に求めてきました。

 アメリカ空軍は2026会計年度にA-10を完全退役させる方針で、韓国の鳥山(オサン)空軍基地などに配備されていたA-10を本国に撤収させるなど、退役に向けた準備を進めていました。

 しかし、A-10を評価する傾向の強いアメリカ連邦議会は2026会計年度に「A-10の保有機数を103機以下にしてはならない」という国防権限法を可決。これを受けてA-10は、ペルシャ湾へ出撃することになったというわけです。

 そんなA-10には新たな役割を期待する声も根強くあります。レーザー誘導ロケット弾「APKWS」を搭載して、「ドローンハンター」の役割を果たせるのではないかとの声が、日に日に大きくなっています。

ドローン相手にA-10がうってつけ!?

 低空を低速で飛行するドローンの迎撃には、基本的に空対空ミサイルが使用されていますが、安価なドローンを高価な空対空ミサイルで迎撃する経済性の悪さが指摘されています。

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2016年に開催された「国際航空宇宙展2016」で展示された「APKWS」の実大モックアップ(竹内 修撮影)

 これに対し、BAEシステムズを代表とするチームが開発した「APKWS」は、元々ヘリコプターやUASの対地攻撃用兵器として開発されました。構造は陸上自衛隊のAH-1S対戦車ヘリコプターなどに搭載されている「ハイドラ70」無誘導ロケット弾に、レーザー誘導キットを取り付けたシンプルな兵器です。

 自由主義陣営諸国で広く普及している「サイドワインダー」短射程空対空ミサイルの価格は1発あたり約50万ドル程度ですが、APKWSは簡素な構造であるが故に1発あたりの価格が約4万ドルに抑えられており、空対空ミサイルに比べて安価で、機関砲より安全にUASを攻撃できることから、アメリカ空軍やウクライナ空軍は、APKWSで効果的なUASの迎撃を行っています。

 前に述べたようにA-10は戦闘機に比べれば低速ですが、ヘリコプターやプロペラ駆動のUASより高速で、近接航空支援機という性質上、長時間滞空できます。APKWSを搭載してドローンを相手にするにはうってつけと考えられているようです。

 A-10は2026年4月4日に、イラン軍の攻撃を受けています。結果的に喪失したため、イラン革命防衛隊や日本のメディアなどは「撃墜」と報じていますが、4月5日付のワシントンポストは攻撃を受けたA-10がイラン領内からアメリカの友好国であるクウェートまで飛行し、パイロットを無事脱出させた後に墜落したと報じています。

 同じく4月4日に攻撃を受けたF-15Eがイラン領内で墜落したことと比べると、A-10がいかに「タフ」な航空機であるのかを証明したと言えそうです。

UAS(ドローン)は、正規戦においても大きな脅威となっています。2026年3月25日の時点で、A-10はドローンハンターとして使われていないようですが、前に述べたタフさに加えてドローンハンターの地位を確立したら、A-10にはさらなる延命が待っている……のかもしれません。

【これが持ち味!】低空でズドドドやるA-10の「巨大な機関砲」(写真)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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