弱点ついに克服!? 新型ミサイル戦車は「情報で撃つ兵器」に 背景にある戦い方の変化

ドローンが戦場を覆う現代は、戦車の戦い方が大きく変わろうとしています。欧州のメーカーが発表した戦車向け新型ミサイルは、かつて失敗した「ミサイル戦車」のコンセプトを復活させるかもしれません。

「力で押す兵器」から「情報で撃つ兵器」に

 当時の戦車戦は、数キロ先の敵戦車を自分の目で見つけて直射で撃破することが前提でした。装甲と高初速砲弾による撃ち合いが中心であり、ミサイルは誘導装置が未成熟で高価、発射速度も遅く、信頼性も十分ではありませんでした。ガンランチャーは砲としてもミサイル発射機としても中途半端という評価を受け、結果として戦車の主武装は滑腔砲に回帰していきミサイル戦車のコンセプトは一度姿を消しました。

 しかし現在の戦場環境は、この時代とは根本的に異なります。ロシア・ウクライナ戦争では、小型UAV(無人航空機)が常時上空を飛び、戦場はかつてないほど「透明化」されています。MBDAによれば、ウクライナ戦線での主力戦車の交戦距離の7割が1500m以内とされています。敵が見えるまで前に出なければならない戦車は、すぐ見つかって攻撃されるため、行動は慎重になり不活発になるのも当然でしょう。

 MBDAがミサイル戦車を再提案している背景には、この戦車の戦い方の変化があります。戦車が撃つミサイルは完全に無くなったわけではなく、ロシアの9K119レフリクスや、ウクライナのコンバット125mmミサイルがありますが、いずれも視界内(LOS)でしか使用できません。命中精度がやや向上する程度で、交戦距離1500m以内では大きな優位性はありません。

 アケロンMBT 120が根本的に異なるのは、戦車に「自分の目で見なくても撃てる」能力を与える点です。味方のドローンや前進観測班など、他のセンサーが捕捉した目標情報をもとに非視界(NLOS)で攻撃できます。戦車は単独で戦う存在ではなく、ネットワーク戦闘の中の火力ノードになります。言い換えれば「力で押す兵器」から「情報で撃つ兵器」になるのです。

 従来、戦車は突破力が期待された兵器でした。しかし現在は、前線に深く踏み込むこと自体がリスクを伴います。むしろ、高い防御力を持ち、ある程度後方で機動しながら精密打撃を行う「高防御の機動砲兵」としての性格が強まっています。安価で即応性に優れる通常砲弾は依然として不可欠ですが、視界外から精密に目標を叩けるミサイルを併せ持つことで、戦車の汎用性は確実に高まります。

 もちろん課題も少なくありません。ミサイルは砲弾に比べて高価であり、大量消費には向きません。データリンクが妨害された場合の信頼性、電子戦環境下での運用、補給の問題など、解決すべき点は多くあります。ミサイルやドローンも万能ではありません。しかし何も変えない戦車が生き残れる保証もありません。

 MBDAは、2026年中にアケロンMBT 120の実射試験を実施し、2027年の製品化を目指しています。価格は明らかにしていません。

【不遇の系譜】従来の「ミサイル戦車」を見る(写真)

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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