なぜ「ホンダジェット」は新型を造るのか? 親会社ホンダ“6900億円赤字”の逆風下でも“挑む”ワケ
ホンダの航空機事業子会社が開発中の新型ビジネスジェット「エシュロン」。既存機より大型化され、市場規模も拡大しますが、この機体には創業者・本田宗一郎の夢を実現する以上の、経営的な大きな意味が込められています。
赤字脱却の切り札 市場規模は一気に2倍へ
それは「エシュロン」がHACIの「赤字を跳ね返す」役割を背負っているということです。
「ホンダジェット」を語る際、「業績としては赤字」が常に出てきます。HACI親会社のホンダが公表するグループ全体の経営レポート(2025年版)によると、HACIが担うエンジンを含めた「ホンダジェット」事業は約390億円の赤字を記録しています。
一方、アメリカの統計による2025年のビジネスジェット機全体の出荷数は約850機。このうち、大きさ別のビジネスジェット機の納入数は、VLJクラスが100機台前半であるのに対し、LJクラスはほぼ2倍の約200機になります。つまり、HACIは「エシュロン」の投入で、一気に2クラスあわせて年間約300機が売れる市場を相手にできるのです。これは販売へ追い風となり黒字転換へ期待が持てます。
自動車メーカーであるホンダが航空機事業に参入することは、ホンダの創業者である本田宗一郎氏の夢でしたが、企業として存続していくには黒字への転換が現実的に欠かせません。約200機の販売規模を持つ市場を相手にできる「エシュロン」はHACIの経営安定へ欠かせないのです。
筆者の質問に対し、HACIは具体的に何年後に黒字転換を目指しているかまでは明らかにしませんでしたが、VLJとLJクラスの将来に「楽観的な見通しを持っている」と答えています。ホンダの2026年3月期連結決算の最終利益は、最大6900億円の赤字になる見込みと既に発表し、逆風に見舞われています。
しかし、HACIはこれまでも初期型のホンダジェットのアップグレード・パッケージなどでカスタマーサービスを図り、「エシュロン」も3号機の製造に取り掛かっていることから、まず重要なマイルストーンとなる初飛行は、これまでに公表している通り2026年中と見てよいと筆者は考えています。
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。





コメント