耳栓必携? 海自の「異形の無人機」が護衛艦に“ピタリ着艦”! 燃料計すらない!? 驚きの運用方法が明らかに

海上自衛隊がもがみ型護衛艦「くまの」で、垂直離着陸型無人航空機(UAV)「V-BAT」の運用訓練を初めて報道公開しました。「十字架のようにもトーテムポールのようにも見える」と評される異形の機体は、省人化を目指す海自の新たな挑戦です。

課題は「詰め」の部分

 機体は複数のコンテナに分解収納されており、2人の機体取扱い員により30分ほどで組み立てが可能です。機体構造は、省けることは徹底的に合理化するというアメリカらしい発想で、例えば燃料計はありません。タンクは空であることを確認して何リットル注入したかを正確に計測します。エンジン回転数と飛行時間をモニターして残量を算出する仕組みです。

 組み立てが終わると発射プレートにセットされます。離艦をアシストする空気圧のボンベにエアコンプレッサーで空気を充填します。甲板には着艦の基準となる電波を発信する「パット」状のアンテナが設置されます。

 機上センサーと取扱い員による気象条件等のデータが照合チェックされると、いよいよエンジン始動です。2気筒2ストロークエンジン音は甲高く、始動直後に吹き出す白い排ガスは、何やら昔の直管マフラーを付けた2ストロークエンジンのバイクを思い出させます。燃料はアメリカ海軍や海上自衛隊の航空機で広く使われているJP-5という規格です。排気口が前向きになっているのは、尾部ダクテッドファンというレイアウトの都合でしょうが、ちょっと不自然にも見えます。

 ひときわ甲高いエンジンを響かせて垂直に発艦すると、徐々に高度を取って水平飛行に移行し視界から消えていきました。今回の訓練では基本洋上を飛行しますが、着水してしまった場合浮いていることはできず即沈没するそうで、位置発信機能もないので回収は不可能ということです。そうした設計思想にも実用性を優先する考え方が表れているように感じました。

 V-BATが帰艦してくるとあの甲高い音が聞こえてきます。気が付くと頭上に垂直姿勢でホバリングしている機体ありました。トルクのある単発エンジンとダクテッドファンを制御してホバリングさせるのは難しくオートパイロットの為せる業です。ちなみに現在の所、発着艦させる対気速度の基準は9ノット未満としているそうです。降下速度はゆっくりですが、動揺する狭い飛行甲板に真っ直ぐに着艦しました。

 29日と30日にそれぞれ複数回の飛行が予定されていましたが、細かい不具合の調整や修正で両日とも1回ずつの飛行となりました。今回取材した限りでは、課題は飛行性能そのものではなく、運用手順やデータ管理など、実用化へ向けた「詰め」の部分に移りつつあるという印象を受けました。

 初めて実施されたFFMでV-BATを運用する試みは、単に新しい無人機を飛ばす訓練ではありません。「省人化」と「省エネ化」を実現する新しい艦隊運用へ転換することを目指す海上自衛隊の新たな挑戦でもあります。

【十字架? トーテムポール?】独特なV-BATを様々な角度から見る(写真)

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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