移動手段であり“忍者”でもある!? 軍用の「静かすぎる電動バイク」が目指す新しい戦い方

軍隊が電動バイクに注目しています。その理由は、環境問題やサステナビリティだけではありません。大きな原因はFPVドローンや偵察ドローンです。

目指すのは「速さ」ではなく「忍び寄ること」

 電動バイクはエンジン車と比べて走行音が小さく、赤外線で探知される要因となる熱シグネチャも抑えられることから、敵に発見される可能性を低減する移動手段として期待されています。

Large 20260719 01

拡大画像

ETRICKSの電動バイクのハンドル部分(布留川 司撮影)

 こうした考え方は、すでに実戦にも表れています。ウクライナでは電動バイクが偵察やドローン部隊の展開、補給、負傷者搬送などに利用され、国産の「WOLFSTORM」が正式な装備品として承認されたとも報じられています。一方、イギリス、オーストラリア、アメリカでは、特殊部隊や偵察部隊を中心に試験・評価が続いています。

フランス軍でも2024年から技術評価機関STATによる電動バイクの評価試験が行われています。つまり、特定メーカーではなく「電動バイク」というカテゴリーそのものが軍事利用の対象として注目され始めているのです。ETRICKSやSPECTREも、そうした流れの中で登場した車両といえるでしょう。

 もちろん、電動バイクにも弱点があります。ガソリン車と比べて航続距離は短く、充電にも時間を要します。そのため、陸上自衛隊の偵察オートのように、給油を繰り返しながら長時間・長距離を単独で行動する用途には適していません。

 しかし各国軍は、この弱点を補うことよりも、長所を最大限に生かす運用を考えています。装甲車やヘリコプター、ボートなどで任務地域近くまで進出し、最後の数kmだけを電動バイクで静かに移動する「ラストマイル」の機動です。これにより、小部隊の隠密行動能力を高めることが期待されています。

 音もなく敵地へ侵入し、偵察やドローンを展開し、任務を終えれば静かに離脱する――もし将来、陸上自衛隊でも同様の車両が採用される日が来れば、それは偵察オートの後継ではありません。特殊部隊やドローン部隊の隠密機動を支える、新しい時代の軍用モビリティとなるでしょう。

 ドローンが戦場を変えたことで、軍用バイクもまた「速く走る乗りもの」から「静かに忍び寄る乗りもの」へと役割を変えようとしています。その姿は、まさに現代の忍者そのものといえるかもしれません。

【こりゃコンパクト!】軍用電動バイクの輸送イメージです(画像)

Writer:

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. イラン海軍の潜水艦が「撃破される瞬間」捉えた映像が公開 3隻の無人ボートが基地を急襲 “米軍史上初”の攻撃
  2. ロシア軍の攻撃ヘリが「飛行中に急襲される瞬間」捉えた映像が公開 背後から「刺客」が忍び寄る
  3. 首都高の「高級外車」がトンネル内で大炎上! “火だるまになる”恐怖の一部始終を捉えた映像が公開 ドライバーに批判も
  4. 惨劇なぜ? 旅客機の客室窓が“上空で木っ端みじん” 「乗客の体が吸い出された」戦慄の様子が公開される
  5. 海自の最速艦艇が「主砲を撃ちまくる」珍しい映像が公開 最高速力は80km/h以上! 対空戦能力を披露
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ロシア軍の戦闘機が「真正面から撃破される瞬間」を捉えた映像が公開 ドローンの突入を防げず
  3. 海自の潜水艦が発射した魚雷が「揚陸艦へ突進」 雷跡を上空から捉えた珍しい写真が公開される
  4. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  5. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号