移動手段であり“忍者”でもある!? 軍用の「静かすぎる電動バイク」が目指す新しい戦い方
軍隊が電動バイクに注目しています。その理由は、環境問題やサステナビリティだけではありません。大きな原因はFPVドローンや偵察ドローンです。
目指すのは「速さ」ではなく「忍び寄ること」
電動バイクはエンジン車と比べて走行音が小さく、赤外線で探知される要因となる熱シグネチャも抑えられることから、敵に発見される可能性を低減する移動手段として期待されています。
こうした考え方は、すでに実戦にも表れています。ウクライナでは電動バイクが偵察やドローン部隊の展開、補給、負傷者搬送などに利用され、国産の「WOLFSTORM」が正式な装備品として承認されたとも報じられています。一方、イギリス、オーストラリア、アメリカでは、特殊部隊や偵察部隊を中心に試験・評価が続いています。
フランス軍でも2024年から技術評価機関STATによる電動バイクの評価試験が行われています。つまり、特定メーカーではなく「電動バイク」というカテゴリーそのものが軍事利用の対象として注目され始めているのです。ETRICKSやSPECTREも、そうした流れの中で登場した車両といえるでしょう。
もちろん、電動バイクにも弱点があります。ガソリン車と比べて航続距離は短く、充電にも時間を要します。そのため、陸上自衛隊の偵察オートのように、給油を繰り返しながら長時間・長距離を単独で行動する用途には適していません。
しかし各国軍は、この弱点を補うことよりも、長所を最大限に生かす運用を考えています。装甲車やヘリコプター、ボートなどで任務地域近くまで進出し、最後の数kmだけを電動バイクで静かに移動する「ラストマイル」の機動です。これにより、小部隊の隠密行動能力を高めることが期待されています。
音もなく敵地へ侵入し、偵察やドローンを展開し、任務を終えれば静かに離脱する――もし将来、陸上自衛隊でも同様の車両が採用される日が来れば、それは偵察オートの後継ではありません。特殊部隊やドローン部隊の隠密機動を支える、新しい時代の軍用モビリティとなるでしょう。
ドローンが戦場を変えたことで、軍用バイクもまた「速く走る乗りもの」から「静かに忍び寄る乗りもの」へと役割を変えようとしています。その姿は、まさに現代の忍者そのものといえるかもしれません。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info





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