【試乗】ダイハツ「ムーヴ」MC 新搭載「スマアシIII」ほか納得の「基本性能」とは(写真22枚)
「スマアシIII」はなぜ評価されるのか
さて最後に肝心な「スマートアシストIII」のことをお話しましょう。
基本的にスマアシIIIは、衝突回避ブレーキ以外の制御を警告音で行います。いま自動車の安全先進技術としてはアクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)が話題の中心にありますが、そのレベルにまでは及んでいません。
その理由はまずコストの問題でしょう。電動パワーステアリングに強力なモーターアシストを追加してハンドルを自律操作するシステムは高価ですし、軽自動車としては重量増加にもつながります。全車速追従機能などはカメラ以外にミリ波レーダーも必要となるでしょう。
まだまだこの分野はコストがかかり、それが「軽自動車の価格」に反映されてしまうことを考えると、スマアシIIIのシンプルな制御には納得できるものがありました。
今回衝突ブレーキは試しませんでしたが(笑)、車線逸脱までは行かない、タイヤが白線を踏むか踏まないかのレベルからきちんとこれを発見し、大きめな音で警告します。そしてこの「大きな音で警告する」という割り切りは、実は安全にかなり近いと感じました。日々の生活と密着する軽自動車にとって、スマホを見ながら運転することや同乗者との会話に夢中になるなどの不注意運転は身近な問題。ここで操舵アシストが黒子的にステアリングを修正するよりは、警告音でハッキリと知らせる方が、事故を減らせるのではないか、と感じたのです。軽自動車は「ムーヴ」に限らず低速域での回頭性を得るために操舵に対するハンドリングも俊敏。かつ重心も高いので、これを自動制御でスムーズに操舵するのもかなり難しいでしょう。だったら今は原始的な方法ですが、警告音で知らせる方がシンプルだと思ったのです。
ACCは高速巡航時のオートクルーズが発展したシステムなので、グランドツーリング性能に優れる「RS」グレードのようなモデルには、将来的に標準化があってもよいかもしれません。当然トヨタとの連携も強固なダイハツだけに、その部分については考えを巡らせているはずでしょう。
【了】
Writer: 山田弘樹(モータージャーナリスト)
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。レース活動の経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆中。並行してスーパーGTなどのレースレポートや、ドライビングスクールでの講師も行う。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
少し燃費から解放されて、エンジンに飯を食わせて仕事をキッチリさせる発想のほうが逆に実燃費は改善されるのではあるまいか?軽とは呼びにくい車重や、いかにも空気抵抗を受けやすい形、660ccと言う縛りの中では今が限界ではないでしょうか?