広がる「廃線観光」その魅力とは 廃止間近のJR三江線でも「観光化」、実現なるか
「廃線活用事業者」の全国組織も 「廃線観光」は大きなうねりに?
前出のように、「江の川鉄道応援団」が三江線における廃線後の活用案として参考にしたもののひとつが、旧・神岡鉄道の事例です。NPO法人「神岡・町づくりネットワーク」により、旧・奥飛騨温泉口駅(岐阜県飛騨市)を拠点に廃線をレールバイクで走る「レールマウンテンバイク Gattan Go!!」に利用され、年間4万人以上が訪れる人気スポットとなっています。2016年4月には、現役時代の車両を走らせることも行われました。
廃線の活用事業を営む団体の連携組織「日本ロストライン協議会」の設立総会も開催され、全国から事業者が集まりました。その幹事でもある神岡・町づくりネットワークに、廃線活用の現状について話を聞きました。
――廃線はどのように活用されているのでしょうか?
わたしたちのように線路も駅もあり、レールバイクのような“乗りもの系”のアクティビティを提供しているところもあれば、線路がなくトンネルや橋といった施設だけがあり、廃線のトレッキングツアーを主体としているところなどもあります。
――廃線観光の魅力とはどのような点でしょうか?
現役の地方鉄道にわざわざ乗りにくるのは、鉄道に興味のある方が大半だと思いますが、廃線の観光はその“ハードル”がぐっと下がると感じています。訪れる方の多くは単に「きれいな景色を楽しみたい」「暗いトンネルを通ってみたい」「そこでライトな乗りものがあるなら乗ってみたい」といった動機で、鉄道の知識を必要とすることなく、それぞれの楽しみ方をされています。
一方で、廃線に残るレールや、トンネル、橋といった遺構は当然ながら、かつてそこで使われていた“本物”です。レールバイクで線路を走り、レールの継ぎ目を通過するときのガタンゴトンという音を体で感じたり、線路跡を歩きながら「昔の車窓はこうだったんだね」と想いを馳せたりと、鉄道に興味のない方でも本物ならではの体験を味わうことができるのです。
――廃線の活用で課題になるのはどのようなことでしょうか?
遺構の持ち主は誰か、ということでしょう。安全基準なども、その持ち主の考え方によって異なります。第三セクターからの廃線の場合は、自治体が持ち主である場合が多いので、廃線の活用事業も比較的スムーズに運ぶケースが多いですが、たとえばJRからの廃線でしたら、どこが施設を譲り受けるのか、どんな条件かといった調整が必要になり、その後の施設維持はどうするか、といったことも問題になります。このため、廃線の活用事業者はそれぞれで発足の経緯がまったく異なり、それぞれに実現までのドラマがあるのです。
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神岡・町づくりネットワークは、「10年前にわたしたちがレールバイクを始めた当初は、神岡鉄道のファンや地元の方しか来ないだろうと思っていましたが、ふたを開けてみると、そのような方はむしろ少数派」だといいます。営業路線としては廃止されたものの、その廃線を活用することで、新たな観光客の獲得に成功しているようです。
実際、廃線を巡るツアーも全国で数多く実施されており、自治体や民間団体による主催のほか、大手旅行代理店の阪急交通社でもこれに着目しているといいます。
「移動手段でなくなった鉄道を、コンテンツのひとつとして盛り込むツアーが増えています。というのは、廃線が遊歩道などとして整備され、桜や紅葉のスポットとなっていることもあります。それだけでも観光の価値がありますが、そこに『廃線』という要素があることで、一般の方にとっては『新しい』形のツアーとして受け入れられ、鉄道ファンならずとも広く人気があります」(阪急交通社)
廃線のツアーだけでなく、三江線など廃止間近の路線をめぐるツアーも人気が高いといいます。
三江線の廃止後に向け活用法を構想する「江の川鉄道応援団」の松島さんは、「今後、廃線は全国でさらに増えるはず」といい、「わたしたちの取り組みがひとつの模範になれば」と意気込んでいます。
【了】
鉄道には興味がないのでメール送らないでください!!
1年以内、5km未満に限り、廃止した線路にレールバスを走らせることができるという規制緩和経済特区を作ればいいのでは。